10月初旬にロシアを訪問した鈴木宗男参院議員を巡り、日本維新の会は除名処分を決定するも、鈴木議員が離党することで決着した。鈴木氏の訪ロに意義はあったのか。除名処分は妥当だったのか。元外交官で作家の佐藤優氏が語った。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
ロシアは処理水の海洋放出を
中国と一緒に批判しようとしていた
物議を醸した鈴木宗男参院議員のロシア訪問ですが、早くも成果が表れています。
10月10日、日ロ両国は、福島第一原発の処理水の海洋放出に関する省庁間対話を、テレビ会議形式で行いました。ロシア側の動植物衛生監督庁などの出席者に対し、日本側はトリチウムを含む放射性物質の検査方法や水産物の安全性について、科学的根拠に基づいて説明しました。
処理水の海洋放出について、中国と一緒に批判の側に回ろうとしていたロシアに、冷静な対話を促したのは、実は鈴木議員がモスクワで道筋をつけてきたものです。このことだけでも、日本政府のなしえなかった大きな外交成果だといえます。
元島民の墓参、北方四島周辺の漁業…
公式ルートでは交渉が難航している問題
鈴木議員はモスクワで、ロシア外務省のルデンコ次官、ガルージン次官と会談しました。日本を担当するルデンコ外務次官には、人道的観点に立つ北方領土への元島民の墓参実現や、北方四島周辺における安全操業協定に基づく漁業の実現などについて訴えました。いずれも、公式ルートでは交渉が難航している問題です。
ウクライナを担当するガルージン次官とのやりとりについて、鈴木議員はこう明かしています。
「忌憚(きたん)のない意見交換をしました。『双方が銃を置く』『一にも二にも停戦が一番だ』。このことをロシアが主導的な立場で行うべきでないかという話をしました」
ガルージン次官からは、ゼレンスキー大統領が署名した「ロシアと停戦しない」という法律を取り消さなければ交渉ができない、という話があったそうです。このくだりは、訪ロ中の10月4日に『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)で放送されました。即時停戦に反対するロシア政府の幹部に、言うべきことは言ってきたわけです。決してロシアにおもねった行動を取っているのではありません。