米国と中国による急激な保護主義の台頭は、二大市場に依存する日本企業にとって大きな誤算となる。ダイヤモンド編集部は、米国と中国への売上高依存度が高いにもかかわらず、現地への事業投資が進んでいない「逼迫度」を独自試算した。特集『企業震撼!膨張する地政学リスク』(全5回)の#3では、両国への投資逼迫度ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
米中対立で窮地に陥る日本企業
ワーストランキングを初試算
中国経済の減速と中国政府による(日本を含む)外資企業への締め付け――。中国ビジネスを積極展開してきた日本企業に、二つの重大課題が突き付けられている。
習近平政権が3期目に突入して以降、中国政府は自国に進出している外資の「選別」を一層強めている。中国企業が世界に匹敵する競争力を備えた今、中国にうまみのある技術・ノウハウをもたらす外資だけが、中国市場で戦う「参加の権利」を与えられるということだ。そうでない外資は中国市場からはじき出されてしまう。
ここにきて、中国偏重の事業構造が経済安全保障上のリスクとなって表面化しているのだ(本特集#1『日本企業「中国依存度」ランキング【地政学的に高リスクな上位50社】3位村田製作所、1位は?』参照)。
もう一つの大国、米国でも、外資の技術やサプライチェーンを囲い込む動きが活発化している。発端は、昨年に成立した米インフレ抑制法(IRA)だ。インフレを抑えることをお題目に、半導体や電池、電気自動車(EV)など「脱炭素に関わる重要技術」を持つ外資を自国へ招聘するための産業政策メニューが盛り込まれている。
外資への優遇策を大盤振る舞いする米国。外資への締め付けを強める中国。アメとムチというアプローチの違いはあれども、二つの超大国が自国でビジネスを展開する外資の「選別」を始めているのだ。
米国と中国による急激な保護主義化は、二大市場に依存する日本企業にとって大いなる誤算だ。というのも日本企業は、自由貿易を前提に、世界に効率的なサプライチェーンを張り巡らすことに注力してきたからである。
だが、その前提は崩れ去った。今後、日本企業は保護主義を前提とした生産、開発、販売体制を早急に構築しなければならない。それでは、米中対立の激化が日本企業にもたらす「投資リスク」とはどの程度のものなのか。
ダイヤモンド編集部は、米国と中国への売上高依存度が高いにもかかわらず、現地への事業投資が進んでいない「逼迫度」を独自試算した。次ページでは、米中対立で窮地に陥るリスクの高い「米国版ワーストランキング121社」と「中国版ワーストランキング73社」を公開する。