「VR内覧」先端テクノロジーで実感、住まい探しと住宅設計はドラスティックに進化している!3DCADデータから生成されたVR内覧システム「ROOV」の仮想空間。スマートフォンやパソコン上で簡単に操作できる。 画像提供:スタイルポート

物件内覧のあり方が、テクノロジーの活用により大きく変化している。仮想空間(VR)内覧システムをいち早く開発・提供し、変化の一翼を担ってきたスタイルポートの間所暁彦氏が語る「仮想空間」の活用と未来とは。

不動産業界で活用が進む
「4つのVR内覧」 

 テクノロジーを使い、現地に行かずとも、実際に物件を内覧しているかのような擬似体験を提供するのが「VR内覧」。その覧普及の背景には、どのような課題があったのか。 

「VR内覧」先端テクノロジーで実感、住まい探しと住宅設計はドラスティックに進化している!間所暁彦(まどころ・あきひこ)
スタイルポート代表取締役。ゼネコンに13年勤務した後、証券会社へ。その後ゼネコンに戻り、開発担当取締役に就任。2017年、不動産VR内覧システム「ROOV」を開発・提供するスタイルポートを設立。Photo by Hiromi Tamura

 2019年に不動産VR内覧システム「ROOV」を開発したスタイルポート代表の間所暁彦氏は、「2Dの図面からイメージしたものと、実際の物件(3D)の食い違いが、関係者にさまざまな不利益をもたらしていた」と当時を振り返る。

「例えば、設計事務所のスタッフは紙の図面でプランを練る際、イメージのすり合わせのため、膨大な数の打ち合わせを繰り返しています。一方、新築物件の購入者側も、図面からイメージしたものと、実際の部屋を見たときのギャップに、大きなショックを受けるケースが後を絶ちません。最初から3Dで計画・打ち合わせをすれば、そうした不具合はあらかた解消できるはずです」

 間所氏は、現行のVR内覧サービスを4つに分類(図1)し、市場を以下のように分析する。

 まず最も使われている手法の一つが、(1)パノラマ画像群・360度写真系だ。これは全方向撮影できる360度カメラの写真を使い、擬似的に3D空間を表現する手法。安価に作成できるため、賃貸物件検索サイトなどで広く使われているが、建築が完成していることが使用の前提条件となる。

 (1)同様にパノラマ画像を使うが、CGを用いるのが、(2)パノラマ画像群・360度CG系だ。リアルな表現ができ、未完成の物件にも対応できるものの、事前にCGに書き出した部分以外は見ることができず、自由に場所移動ができない(定点移動)。

 (1)(2)は定点移動が主流なのに対して、あたかも部屋の中を歩き回れるかのような体験を提供するのが、(3)リアルタイム3DCG群・アプリ系だ。これは、リアルタイム3Dを専用アプリで表示するもので、高品質なグラフィックを体験できる。ただ、最先端デバイスが必要なため利用シーンが限られ、主に新築マンションのプレゼンテーションなどに使われる。

 一方、リアルタイム3Dをウェブブラウザー上で表示でき、比較的安価に制作できるのが、(4)リアルタイム3DCG群・Webブラウザー系だ。グラフィック表現には制約があるものの、スマートフォンやパソコン上で操作でき、利用シーンを選ばない。「ROOV」は、ここに分類される。