ノーロードインデックス投資信託の雄である三菱UFJアセットマネジメント(MUAM)に対し、国内運用業界最大手の野村アセットマネジメント(AM)が7月、業界最低の信託報酬で挑んだが、MUAMは即座に追随。野村AMは再値下げを否定するが、MUAMはさらなる値下げは可能との見解を示す。ニッセイアセットマネジメントは米国株投信で追随した。特集『新NISA 徹底活用』(全15回)の#1では、新NISA(少額投資非課税制度)の投資家獲得を目指す運用業界の仁義なき競争を追う。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
ネット証券拡大で進む低コスト化
“格安王者”三菱に最大手の野村はどう対抗?
「三菱は野村の芽を摘んだ」――。今年、運用業界で起きたデッドヒート。インデックス型の投資信託の信託報酬の料率を巡って、業界の雄が真っ向からぶつかる大胆な引き下げ競争が生じたのだ。
少額投資非課税制度(NISA)が来年1月から制度改正され、投資枠が年間最大で120万円から360万円へと拡大。そして非課税期間は無期限となる。
かつては証券会社の営業員が顧客の元に熱心に通い詰め、時には口八丁手八丁で購入を契約させることもあった投資信託の販売現場も、今や激変。金融庁の方針で証券会社はこうした営業活動ができなくなった。
また若い投資家はインターネット証券で口座を開設。動画やSNSで投資手法を学び、運用パフォーマンスや信託報酬などのコストを自ら吟味して、商品を購入するのが当たり前になった。
特に2020年の新型コロナウイルスの感染拡大後、若者の巣ごもり傾向と将来不安から、積み立て投資が浸透した。SBI証券と楽天証券の口座数がコロナ前からほぼ倍増したように、こうした動きは一層顕著になっている。NISAの来年からの制度改正で、投資家層のさらなる拡大が期待されている。
ネット証券口座での積み立て投資の全盛という状況を受けて、運用各社はネット証券向けの低コストのインデックス投信を次々に投入してきた。“格安投信”の業界における王者は、三菱UFJ国際投信の社名を10月に変更した三菱UFJアセットマネジメント(MUAM)である。
同社のインデックス投信「eMAXIS Slim」シリーズは業界最低水準の信託報酬で残高を急伸させ、格安投信の代名詞となってきた。
ここに殴り込みをかけたのが、国内証券業界のガリバーである野村ホールディングス傘下で、国内運用業界でも最多の66兆5000億円(22年末現在)の運用資産残高を擁する野村アセットマネジメント(AM)だ。これに三菱はどう対抗して「野村の芽を摘んだ」のか?他の運用各社の商品戦略と共に比較し、その成否を占う。