九州電力九州電力 Photo by Masataka Tsuchimoto

関西電力など4社が絡んだとされるカルテル事件で約27億円の課徴金納付命令を公正取引委員会から受けた九州電力。九電は公取委に対して取り消し訴訟を提起したが、一方で同社の一部株主が新旧取締役8人を対象に損害賠償を求める株主代表訴訟を起こした。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、訴状や原告への取材を基に、九電の株主代表訴訟を掘り下げる。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

課徴金納付命令を受けた3社のうち
最後に取り消し訴訟提起を決めた九電

 関西電力が中心となり、中部電力、九州電力、中国電力の各社と結んだとされるカルテル事件。公正取引委員会は3月、関電以外の3社に合計1010億円もの課徴金納付命令を出し、電力業界に大きな衝撃が走った。

 なお事件の“主犯”に認定された関電は、公取委の着手前に事件を真っ先に報告しており、課徴金免除を100%適用された。つまり課徴金はゼロだ。当然のように関電は「公正取引委員会による事実認定について、当社は争わない」(4月の電力・ガス取引監視等委員会への報告概要より)という態度だ。

 処分に不服だったのが他3社。課徴金が多い順に中国電707億円、中部電275億円、九電27億円で、中部電が3月に、中国電が4月に早々と処分取り消し訴訟の提起を表明した。九電は、7月末まで取り消し訴訟の提起の決定がずれ込んだ。

 一方で、九電の一部株主は6~8月、九電に対して新旧取締役への責任追及(提訴請求)を相次いで求めたが、九電は8月、「(新旧取締役に)善管注意義務違反は認められない」として拒否した。

 7月末の九電による公取委への取り消し訴訟提起の決定は、「カルテルの合意がなかった」などと主張する九電の自信の表れとみることができる。だが意外にも、株主代表訴訟によって九電の新旧取締役の責任を追及する前出の一部株主は歓迎していた。

 なぜか。次ページでは、株主代表訴訟の原告団長への取材から、その理由をひもとくとともに、裁判のポイントや被告となった新旧取締役8人のリストを明らかにする。