準大手ゼネコンの三井住友建設が、超異例となる2期連続の最終赤字で窮地に立たされている。都心屈指の大型プロジェクト、麻布台ヒルズのマンション工事の苦戦が原因だ。ゼネコン業界では「三井住友建設はどこに買収されるのか」といううわさが絶えない。特集『ゼネコン複合危機 全国2565社ランキング』の#1では、三井住友建設の買い手として名前が浮上する業界の超大物と、超大穴ともいえる意外な伏兵の正体を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
麻布台ヒルズのマンション工事で大失態
「三建さん、どこに買われるんだろう」
10月28日午前、東京都港区の麻布通りに面した工事現場ではミキサー車が行き交い、ボルトやねじを締める金属音が鳴り響いていた。
この現場は、森ビルが手掛ける複合施設「麻布台ヒルズ」の64階建てタワーマンション建設予定地だ。この日、世間は休日の土曜日。いわば“休日返上”で工事が進められていた。
なぜなら、タワマン工事の完了予定は2024年6月末で、当初よりも16カ月も遅れているからだ。長期の遅れの原因を作った張本人は、施工を担う準大手ゼネコンの三井住友建設である。
実は、三井住友建設にとって麻布台ヒルズのプロジェクトは、自社を奈落の底に突き落としかねない爆弾案件だ。
度重なるトラブルで採算が悪化し、麻布台ヒルズのプロジェクトだけで22年3月期と23年3月期に合わせて500億円を超える特別損失を計上。三井住友建設は2期連続の最終赤字(22年3月期70億円、23年3月期257億円)に沈んだ。財務健全性の指標である自己資本比率は7年ぶりの低水準となる15.5%に落ち込み、“危険水域”に突入している。
1990年代のバブル崩壊で経営危機に陥り、共に株価が100円を下回った三井建設と住友建設が03年に合併し誕生した三井住友建設。リーマンショックや東日本大震災など幾多の試練を乗り越えて業績を回復させ、三井住友建設の株価は18年には900円に迫った。
しかし麻布台ヒルズの失態をきっかけに、三井住友建設の株価は下落。10月27日終値は400円で、ピーク時の半分にも満たない状況だ。
三井住友建設が2期連続の最終赤字を計上して以降、ゼネコン業界では「三井住友建設が買収される」といううわさが絶えない。ある準大手ゼネコン幹部はこうつぶやく。「三建(三井住友建設)さん、いったいどこに買われるんでしょうね」。
21年に三井住友銀行出身の近藤重敏氏が、三井住友建設の代表取締役社長に就任したことも臆測に拍車を掛ける。銀行出身者がゼネコンのトップを務めるのは、極めて異例だからだ。三井住友建設のメインバンクである三井住友銀行が、他社との合併に動いているとの話が出回るほどである。
ある業界関係者は、三井住友建設の行く末を大胆にこう占う。「合併するなら『三井住友』の看板を外すことになるだろう。三井グループでもない、住友グループでもない、今リスクを取れるのは、あの会社だけだ」。
では、あの会社とはどこか。取り沙汰されるのは、飛ぶ鳥を落とす勢いの異業種の企業である。次ページからは、業界関係者の間で三井住友建設の買い手として名前が挙がる超大物に加え、超大穴といえる意外な伏兵の正体を根拠と共に明かしていく。