どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年#8Photo:PIXTA

就職氷河期を通じて激増したのが非正規雇用者だ。日本では長らく正規・非正規の待遇格差が続いたものの、ここにきて風向きが少し変わっている。その象徴が、イオンの中核会社であるイオンリテールだ。同社は昨年から今年にかけて、正社員とパートタイマーの待遇を時間当たりで均等にした。特集『どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年』の#8では、ダイヤモンド編集部が入手した新給与体系を基に、高いスキルを持つパートの待遇を改善し、徹底的に戦力化しようとする同社の人事制度を解剖する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

同一労働同一賃金の先駆け
イオンリテール「新給与体系」を公開

 バブル崩壊後の就職氷河期は、日本の雇用形態を激変させた。その象徴が、非正規雇用者の増加だ。

 総務省「労働力調査」によれば、非正規雇用者数はバブル直前の1988年で約755万人だった。

 そして91年のバブル崩壊後、就職氷河期へと移る。正規雇用の採用が絞られる中、急増したのが非正規雇用だ。2003年には非正規雇用者数が1500万人を突破し、氷河期を通じて、正社員が当たり前の時代は終焉した。

 ただ、その後も続いたあしき慣行がある。正規・非正規間の待遇格差だ。一度非正規雇用で入社すると、なかなか正規雇用に就けない。それどころか、正社員と同じ仕事や成果でも所得格差が生じる問題が、長らく放置されてきた。「企業は財務と業務の柔軟性から非正規雇用を採用してきた。すると、非正規社員の中には次から次に仕事が任されて、給料が正社員と比べて不公平な状態の人も増えてしまった」(リクルートHR統括編集長の藤井薫氏)

 ところが、「分離していた正規と非正規が、ここに来て再び似通ってきている」(藤井氏)という。どういうことか。

 今年の春闘を振り替えると、日本企業は30年ぶりの高い賃上げ率を実現させた。一部は非正規や、その約半数を占めるパートタイマーにも波及している。

 ここで目立った動きを見せたのがイオンだ。同社は、パート約40万人の時給を平均7%も引き上げた。イオンリテールワーカーズユニオン中央執行書記長の濱本隆宏氏は「今までは時給が最低賃金に追い付かれ、離しては追い付かれ、の展開だった。今年は最低賃金に追い付かれないところまで引き上げられ、組合としても前向きに捉えている」と話す。

 それだけではない。イオングループの中核会社であるイオンリテールは、正社員とパートの待遇を時間当たりで均等にした。実は、同社は昨年から今年にかけて、パートの等級や給与の仕組みを他社に先駆けて抜本的に変えているのだ。

 そこで、ダイヤモンド編集部が入手したイオンリテールのパートの新資格体系と新給与テーブルを、時給5円単位で公開する。すると、121項目にも及ぶスキルで明確に給与が上がり、さらに正社員と同等級になれば、年間で1人当たり約125万円の待遇アップになることが分かった。人手不足時代にパートを徹底的に戦力化する人事制度を、次ページで解剖していこう。