コロナの感染拡大による在宅勤務や生活スタイルの変化により、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISA口座を開設する動きが急増した。そして、2024年からは新NISAがスタートする。本連載では、新NISAをきっかけに投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、失敗しないためのポイントをわかりやすく解説していく。『新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容を基に、一部を抜粋して公開する。「新NISAってなに?」というビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすく説明するので、ぜひ最後までお付き合いください。
資産の増え方を、
年代別にシミュレーションしてみよう
本章の最後に、年代別の新NISAを利用した積立投資の方法、その増え方のシミュレーションをしてみましょう。実際、新NISAを用いて、どのくらいの資産形成が可能になるのでしょうか。年代別にいくつかのケースを提示してみます。
基本的につみたて投資枠を用いて、1800万円の非課税保有限度額を達成する際のシミュレーションです。
ちなみに新NISAの非課税保有限度額は、簿価残高ベースで計算されるので、積立期間中に得られる運用収益は、非課税保有限度額の計算に入れません。あくまでも積み立てる元本ベースで1800万円ということになります。
したがって、月々の積立金額が決まれば、積立元本が1800万円に達するまでにかかる年数は、簡単に計算できます。電卓を叩けば簡単に計算できますが、一応、金額別にかかる年数を記しておきましょう。
毎月1万円積立…………150年
毎月3万円積立…………50年
毎月5万円積立…………30年
毎月6万円積立…………25年
毎月7万円積立…………21年半
毎月10万円積立…………15年
毎月20万円積立…………7・5年
毎月30万円積立…………5年
これを見れば、1800万円を元本ベースで満たすのは、結構大変だということが分かると思います。毎月1万円をコツコツ積み立てても、大した効果はないということでもあります。あとは自分の年齢に応じて積立金額を考えればいいでしょう。
今が30歳なら、定年まで35年間は働けるので、それまでに1800万円に達したいのであれば、毎月5万円を積み立てる必要があります。
今50歳で65歳までの15年間で1800万円にしたいなら、毎月10万円ずつを積み立てねばなりません。
また、投資資金に余裕のある方であれば、毎月30万円ずつ積み立てれば、5年間で1800万円になります。
とはいえ、毎月30万円はさすがにきついと思うなら、健康寿命を少し超えてしまいますが、たとえば75歳をゴールにして、25年間で1800万円をつくるプランを考えてみてはいかがでしょうか。25年で1800万円ということは、年間72万円を積み立てれば良いので、1カ月あたりにすると6万円です。
このようにして、積立期間と積立金額のプランを割り出していけばいいのです。
30歳から毎月5万円を30年間積み立てた場合、
年率6%で運用できたら、どうなるか?
中には、毎月6万円は辛いと思う方もいらっしゃるでしょう。
1800万円は欲しいけれども、50歳にして毎月6万円も投資に回さなければとなったら、それだけ楽しく使える分が減ってしまう、つまらない、と思うかもしれません。
なので、モチベーションを上げていただくため、どのような積立投資をすると、どのくらい皆さんの資産が増えるのかを計算してみたいと思います。投資対象となる投資信託は、年率6%で運用することを前提条件にしてみましょう。
まず、30歳から毎月5万円を30年間積み立てた場合、運用益も含めた最終的な金額は、5022万5752円です(214ページ図4‐13)。
これが、40歳から毎月6万円を25年間積み立てた場合だと、4157万9638円。
50歳から毎月10万円ずつ15年間積み立てた場合だと、2908万1871円。
同じく50歳から毎月6万円を25年間積み立てた場合だと、4157万9638円。
このようになります。
理想を言えば、30歳から積立投資をスタートさせ、30年間をかけて5000万円超の資産を築くことです。
しかし、50歳からでも諦めず、75歳のゴールを目指して毎月6万円ずつ積み立てていけば、4000万円超の資産を築くことができるのです。75歳の時点で公的年金を受け取りつつ、金融資産が4000万円もあれば、残りの人生は楽勝です。
大事なのは諦めないこと。マーケットの力を信じて、とにかくコツコツとお金を積み上げていくことです。そうすれば、老後の不安なんかいっさい感じる必要などないのです。
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。