自動車産業の業界団体、日本自動車工業会(自工会)会長に、いすゞ自動車会長兼CEO(最高経営責任者)の片山正則氏が就く異例の人事は、禍根を残しそうだ。特集『ソニー・ホンダの逆襲』(全18回)の#16では、異例の人事の裏側と、トヨタ自動車が主導した自工会会長人事に翻弄されたホンダの本音に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
ホンダの三部社長は
自工会会長就任に前向きだった
そもそも、いすゞからの自工会会長選出は人事の慣習を破るものだ。同会長の任期は1期2年で、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車のトップが輪番制で務めてきた。
問題は、今回、異例の人事に至ったのは、トヨタの豊田章男会長(67歳)が、自工会を牛耳り続けたかったからとみられていることだ。
豊田氏は、商用車メーカーであるいすゞ出身の片山氏を後任に据えた狙いとして、トラックドライバーの時間外労働時間に上限が課されることで輸送能力が不足する「2024年問題」への対応を挙げた。だが、本当の選出理由は、片山氏の「温厚な性格」と、「69歳という年齢」とみられているのだ。
どういうことか。次ページでは、豊田氏が慣習やルールを変更して推し進めた自工会のトップ交代の内幕や、自動車業界団体の人事に翻弄されたホンダの本音に迫る。ホンダの三部敏宏社長(62歳)は、なぜ自工会会長になれなかったのか。