1年前の冬はコロナ禍でマスクをする人がほとんどだったが、感染拡大は落ち着きを見せ、社会は元に戻ってきた。しかし、円安、物価高などといった情勢が収束する気配はない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はゼンショーホールディングス、吉野家ホールディングス、松屋フーズホールディングスの「牛丼」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)
すき家が2割増収で
利益面も絶好調
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の牛丼業界3社。対象期間は2023年5~9月期の四半期(ゼンショーホールディングス、松屋フーズホールディングスは23年7~9月、吉野家ホールディングスは23年6~8月)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・ゼンショーホールディングス(すき家)
増収率:20.7%(四半期の売上高2382億円)
・吉野家ホールディングス
増収率:14.1%(四半期の売上高474億円)
・松屋フーズホールディングス
増収率:18.3%(四半期の売上高309億円)
牛丼3社全てが2桁増収で、中でもゼンショーホールディングスは増収率20.7%という大幅増収だった。
デフレが続いた日本でも、ついにいろんなモノの値段が上がるインフレの様相を呈してきた。それは「デフレの象徴」とも呼ばれた牛丼も例外ではない。長年の牛丼ファンからは、吉野家、すき家、松屋の牛丼・並盛が400円台になってしまったことを悲しむ声が聞かれる。
しかし、ラーメンでも1000円超えの店が増えてきている中、相対的に牛丼の安さが光る場面も多く、「牛丼安すぎ!」と叫ぶ声がSNSでも散見される。具体的には、以下のような声だ(一部、読みやすく編集)。
「吉野屋の牛丼って500円しないの衝撃なんだけど」
「牛丼だけなら400円。安いのは嬉しいが、私的には価格破壊。安すぎだと思う」
「たった400円台でアツアツの牛丼作ってもらって後片付けまでしてもらって食えるとか、冷静に考えて狂ってるだろ。日本安すぎの意味よ」
牛丼チェーンが採算を取れているのかと経営の心配をする声まで上がる中、牛丼3社の業績はどうなっているのだろうか。直近の決算の結果を見てみると、予想外の光景が広がっていた。
次ページでは、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、業績予想の変化も見ていく。