イスラエルとハマスの軍事衝突はいつまで続くのか。一時休戦は停戦に繋がるのか。イスラエルは「ハマス殲滅」を掲げるが、ガザ地区をどうしようと考えているのか。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/ダイヤモンド編集部 浜根英子)
日本はイスラエル側に
軸足を置いている
イスラム教スンナ派武装組織ハマスが支配するガザ地区で、イスラエルが地上作戦を展開しています。
パレスチナ問題における日本政府のこれまでの立場は、イスラエルとパレスチナの間で武力衝突が起きても、いずれの側も支持せず、問題の平和的解決を呼び掛けていました。しかし、現在、日本は明らかにイスラエル側に軸足を置いています。
10月11日に外務省の岡野正敬事務次官が、イスラエルのギラッド・コーへン駐日大使と会談した際に「ハマスなどのパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃を断固として非難する」と発言し、政府として初めて「テロ」という表現を使ってハマスの攻撃を非難しました。そこから日本政府の立場は一貫しています。
11月3日には、上川陽子外相がイスラエルを訪問し、エリ・コーヘン外相と会談しました。イスラエル軍がガザ市を完全に包囲し、これから本格的な地上作戦に入り、多数の民間人が巻き添えになると予測されていたこの時点で、上川外相は「今般のハマス等による残虐な殺りく、誘拐等を含むテロ攻撃を断固として非難する」旨を改めて述べた上で、「イスラエル国民との連帯の意を表明するとともに、今般のテロ攻撃の犠牲者の御遺族に対して哀悼の意を表し、負傷者の方々に心からお見舞い申し上げる」(外務省ホームページ)と述べました。
この発言は、日本政府がハマスの行為をテロとして認定し、イスラエルの立場を理解したことになります。つまり、これから行われる掃討作戦に対する理解を示しています。さらに、会談後にハマスに人質に取られた人々の家族と面会し、激励しています。
日本政府は今起きているガザ紛争を、ロシア・ウクライナ戦争のような主権国家同士の戦争とは見なさずに、ハマスというテロ組織に対するイスラエル軍による掃討作戦であると認識していることが分かります。