資材高にあえぐのは、建設業界のピラミッド構造の頂点に君臨する大手ゼネコンだけではない。大手ゼネコンの下請け、孫請けに当たる建設会社では、資材高による経営悪化はより深刻だ。特集『沈むゼネコン 踊る不動産』(全20回)の#10では、倒産予備軍が2万6000社にも上るとされる中小・零細業者の悲鳴と実情をレポートする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
ライバルの見積書を示され戦慄
「なんで、この価格でできないの?」
新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した資材高が、じわじわと経営を苦しめ始めた今年の春ごろ。東京都内で内装工事を請け負う建設会社の社長は工事単価の値上げを求めるべく、あるゼネコン幹部の元を訪れていた。
しかし、この幹部が社名を伏せたライバルの見積書を差し出すと、社長は思わず息をのんだ。ライバルも同じように資材高にあえいでいるはずだが、その見積額は自社を下回っていたのだ。
この幹部はじろりとにらみ付け、「原材料が値上げになったのは知っている。だけど、なんでおまえのところはこの価格でできないの?」と詰め寄った。返す言葉がなかった。仕事を切られないために、この社長は資材高による工事単価の値上げを諦めざるを得なかった。
次ページからは、資材高にあえぐゼネコンの下請けや孫請けの悲鳴、そして倒産予備軍といわれる中小・零細業者2万6000社の内実についてレポートする。