ビルなどの建設工事で欠かせないのが、電気や空調設備などの専門工事業者「サブコン」だ。サブコンは今、人手不足を逆手にデベロッパーやゼネコンを超越する存在にのし上がっている。特集『ゼネコン複合危機 全国2567社ランキング』(全18回)の#10では、建築事業で主導権を握る大手サブコンの実情と課長到達時の年収について明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
デベロッパー、ゼネコンより
序列が低いサブコン
英語の接頭辞「sub(サブ)」は、「下に」という意味を持つラテン語の前置詞「sub」が由来とされる。その由来通り、地下鉄(subway)や交代(substitution)など、どちらかといえば“主役”扱いではなく、序列でいえば下位に属する単語が多い。
実は、建設業界にも「sub」という言葉がある。電気や空調、通信設備などを専門に取り扱う工事業者は「サブコン(Sub Contractor)」と呼ばれる。もっとも彼らの仕事内容からすれば、「サブ」という表現は、全く当てはまらない。ではなぜ、サブコンと呼ばれるのか。その理由は、建設業界の慣習にあった。
それが、重層下請け構造である。ゼネコンは、発注者であるデベロッパーから建設工事を請け負う。そして、サブコンはゼネコンから設備工事を請け負う。専門工事業者はゼネコンの下請けだから、サブコンなのである。デベロッパー、ゼネコン、サブコンの中で、序列の最下層にいるのがサブコンだ。
ところが、サブコンは昨今の人手不足やインフレを逆手に取り、デベロッパーやゼネコンに強気な姿勢を見せている。「もうからない仕事は受けない」とばかりに、採算の取れる工事を選ぶ「選別受注」をちらつかせているのだ。
いまやサブコンは、デベロッパーやゼネコンを超越した存在にのし上がったといえる。
次ページでは、デベロッパーやゼネコンと立場が逆転したサブコンの下克上の実情をつまびらかにする。「日本一」のプロジェクトを巡り、サブコンがゼネコンに“勝利”した裏事情や、40代で1200万円とも言われるきんでんや大気社、そのほかサブコン大手の課長到達時の年収についても公開する。