コロナ禍後の世界は複雑に変化し先が読めなくなっている。人材派遣や人材紹介、アウトソーシングなど、コンサルテーションをベースとしたハイブリッド型の総合人材サービスを世界60超の国と地域で展開するAdecco Groupでは、変化し続ける仕事の世界を働き手の視点から調査する「未来のグローバルワークフォース」を毎年実施。最新の2023年の調査では人工知能(AI)と生成AIが仕事に与える影響にフォーカス、結果から浮かび上がるトレンドを同社の平野健二取締役に聞いた。
世界23カ国、3万人の働き手に調査を実施
わずか5日間でChatGPTのユーザー数が100万を突破するなど、今生成AIは世界中の多くの仕事に影響を与えている。こうした激しい変化の中で、世界の働き手はどのような意識を持って仕事に向き合っているのだろうか。
AIが自分の仕事に与える影響をポジティブに捉えている……62%
生成AIによって職を失うことを恐れている……7%
現在の雇用主の元で働き続けることを考えている……73%
過去12カ月間にバーンアウトを経験した……65%
これらの数字は、Adecco Groupが毎年実施している「未来のグローバルワークフォース」(Global Workforce of the Future)の調査で明らかになったものだ。
同調査の対象は、南北アメリカ、欧・中東・アフリカ、アジア太平洋の23カ国に居住する働き手3万人。今年で4年目となる調査は、2023年7〜8月に実施された。回答者の大半はホワイトカラーで、企業規模はさまざま。監督責任を持つ回答者が3分の2を占めている。
同調査の内容は大きく二つあり、一つはAI革命が仕事に与える影響について、もう一つはリスキリングを中心としたワークフォースの意識の変化についてである。
調査結果の主な傾向について、アデコの平野健二取締役(Adecco Chief Operating Officer)は次のように説明する。
「世界のほとんどの働き手は、生成AIによる自分の仕事への影響を楽観的(ポジティブ)に考えています。ややポジティブに捉え過ぎているといえるかもしれません。また世界では、コロナ禍による影響があった22年と比べて、現在の雇用主の元で働き続けることを考えている働き手が増加し、その多くは専門性をアップデートすることで、キャリアを自らコントロールしたいと考えています。その一方でバーンアウト(燃え尽き症候群)がまん延しており、ウェルビーイングを実現することが世界的な課題になっています」
次ページでは、同調査の興味深い結果をさらに詳しく紹介する。世界と日本では、生成AIの導入に対するスタンスやリスキリングの意識についてどんな違いがあるのか。経営・マネジメント層はどんな施策を打つべきなのか。多くのヒントが得られるだろう。