「DPI」と「社会人基礎力」判定から見えたこと

 お昼休み後、グループ替えが行われた。それぞれが自分の創ったブロック作品を持って席を移動し、作品を見せながら新しいグループで自己紹介を行っていく。午前中に3人、午後に3人、合計6人――よりたくさんの新しい相手と知り合い、コミュニケーションが図れるように工夫されている。

 午後の最初のワークに登場したのは、「DPI(*3)」診断だ。夏のフォロー研修では、受講者たちは「DIST(*4)」と呼ばれるストレス耐性テストを受けていたが、今回のテストは、職場にふさわしい態度を獲得しているか、また、その態度を実際の職場で発揮できるかを示す職場適性を診断するもの。職業人に求められる態度能力が14項目に分けられ、5段階で診断するようになっていて、受講者は事前に全員がこのテストを受けてから研修に臨んでいた。

*3 「職場適応性テスト DPI」(ダイヤモンド社)は、仕事への向き合い方や他者への態度、組織への順応など広い範囲をカバーしているので、採用場面でのスクリーニングや受検者の特徴を広く理解することに適している。
*4 「ストレス耐性テスト DIST」(ダイヤモンド社)は、仕事をするうえで直面するストレス原因を4つに分類し、それらに対する耐性を受検者の普段行動から測定する。また、発生したストレスを受検者がどのように解消しようとするかの特徴を詳らかにする。

 まず、各項目の評価を自分で予想した後、実際の評価が記載されたフィードバックシートが配られた。そのギャップを見ながら、課題をピックアップし、グループで意見交換する。午前中に行った「仕事地図」やブロックを使ったプログラムが「業務の客観視」を促すものだとしたら、こちらは「個人の客観視」といえるだろう。

 診断結果をもとに、この研修の受講者全体の傾向を内山講師が解説した。「慎重性」が他の項目と比べて相対的に高かったほか、「思考性」「自主性」もやや高く、「活動性」「自己信頼性」などは低い傾向だったという。この結果は、昨年と比べてどうだったのだろうか――研修後に内山講師に尋ねた。

「昨年も『慎重性』は『3』でした。『積極性』や『活動性』は例年低く、昨年は今年よりも『1』の人の数が多かったです。全体的に、『失敗したくない。積極的に動くことに躊躇する』という傾向が見えますね」(内山講師)

 仕事への態度能力は後天的に形成されるものであり、本人の努力や教育によって開発することができるという。結果に左右されるのではなく、結果から学び、変化していくことが重要なのだろう。

 次に学ぶテーマは、「社会人基礎力」だ。「社会人基礎力」とは、経済産業省によって提唱された、「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行(おこな)っていくうえで必要な基礎的な能力」を指す。「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」の3つの分類から、「主体性」「計画力」「柔軟性」など12項目の能力要素に分け、5段階で評価する。主観で自己評価を行い、その結果をレーダーチャートで表現した受講者たちに対し、内山講師が「この12項目を、身近な人がどう評価してくれるのか、気になりませんか?」と問いかけた。受講者たちがその言葉の意味を考えあぐねていると、受講者たちに1枚のシートが配られた。なんと、受講者それぞれの上長が、名前入りで評価し、コメントしてくれていたのだ。思いがけないサプライズに、室内はしばしざわめき、上長からの励ましのコメントを読んで嬉しそうな様子の受講者の姿もあった。「自己評価とのギャップを確認しておきましょう」と、内山講師が呼びかける。他者の評価を知ることで自分を客観視し、このフィードバックを生かせる「フィードバックシーカー」になること――午前中の講義で内山講師が語った内容にもつながっていた。

 ワークを通して学びとなったことを各自が付箋に書いて机に貼っていく。付箋を見ると、「上司のコメントが嬉しかった」「自己評価と乖離があったので聞いてみたい」「来週から頑張る」などの言葉があった。この計らいが受講者たちの背中を押し、一気にポジティブな気持ちに向かわせたように見受けられた。