2024年急成長の8テーマ 日本の最強技術79社 #1Photo:sankai/gettyimages

半導体市場は2024年に空前の活況を迎えそうだ。その起爆剤は「ChatGPT」に代表される「生成AI」ブームだ。AIに不可欠な先端半導体に巨大な需要が発生しており、世界の半導体メーカーに製造装置や技術・材料を供給する、“技術に強み”を持つ日本企業にも強い追い風が吹き始めている。特集『2024年急成長の8テーマ 日本の最強技術79社』(全6回)の♯1では、半導体業界の技術トレンドと市場予測、そして投資の観点から最注目の国内企業15社を厳選して紹介する。(QUICK Market Eyes コメントチーム 阿部哲太郎)

2024年の半導体売上高は過去最高の見通し
「生成AI」の活用本格化が市場をけん引

 主要な半導体メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)は11月末、2024年の半導体市場が前年比13%増の5883億ドルになり2年ぶりに過去最高になるとの見通しを示した。23年見通しの9%減から一転、大幅な伸びを見込む。このうち、データを記憶するメモリーの市場予測は、デバイスの在庫調整で31%減の896億ドルと落ち込んだ23年に対して、24年は45%増と急回復する見通しだ。

 スマートフォンの在庫調整などが影響した23年の半導体業界全体は4年ぶりのマイナス成長となるのが確実だ。新型コロナウイルス禍による特需の反動減や世界的インフレが原因である。それが24年に反転上昇へ向かうと予想されるのは、強力な材料がそろうからだ。

 半導体市場の回復をけん引する最大の材料は、「生成AI(人工知能)」を活用したサービスの本格化だ。生成AIを動かすためには、クラウドサーバーなどに高い計算能力を持たせる必要があるが、その要となるのが半導体である。

 24年後半からの景気回復期待で、低迷していた個人消費が息を吹き返し、スマホやパソコン、民生品向け電子機器の需要も回復すると見込む。これが生成AI向けの半導体の需要を押し上げる要因になる。

AIサーバーで需要激増の半導体メモリー
「HBM」に必須の技術と部材は日本が供給

 生成AIによる半導体の需要爆発を象徴するのが、米半導体メーカー、エヌビディアの主力製品である「GPU(画像処理半導体)」の争奪戦だ。エヌビディア製GPUの先端品は、コア数が多くデータの大量処理に向いているため、AIの学習や推論に用いられる。

 米IT大手のGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ・プラットフォームズ〉、アマゾン、マイクロソフト)が生成AIで後れを取らないよう巨額の投資を続けていることもあり、生成AIに用いられるサーバーの価格は、汎用サーバーの25倍に高騰しているといわれている。一基当たりの価格が500万円以上ともいわれるエヌビディアの最新GPU「H100」を、GAFAM各社は数千台単位で導入しようとしているとみられる。エヌビディアを筆頭に、生成AIに関連する半導体メーカーの業績向上が見込まれる。

 GPUのほかにも、データを一時記憶する「DRAM」メモリーのうち、GPUなどと並んでAIサーバーに不可欠とされる「HBM(広帯域高速メモリー、High Bandwidth Memory)」は、需要激増で品薄が続いている。

 HBMは、メモリーのチップを立体的に重ね合わせてパッケージし、広帯域化することにより信号速度を引き上げ、高速大容量のデータ処理を実現する先端技術だ。このため、高速コンピューティングやAI分野で用いられている。HBMの市場投入では、DRAMメーカーの韓国のSKハイニックスが先行しており、韓国・サムスン電子や米マイクロン・テクノロジーも技術開発を急いでいる。

 このHBMを含め、生成AI向け半導体の製造で重要となる技術・部材で高いシェアを持っているのが日本の半導体関連メーカーだ。

次ページでは、生成AI時代に強さを発揮する企業10社に加え、半導体のサプライチェーンを見たときに「チョークポイント(必要不可欠な特定技術)」となる部材やインフラを供給する企業5社の計15社について、それぞれ強みとなるポイントと共に、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて一挙紹介する。

図表:半導体業界で2024年に注目の15社