2024年急成長の8テーマ 日本の最強技術79社 #4Photo:Andriy Onufriyenko/gettyimages

CO2排出削減目標が厳しさを増す中で、企業も「脱炭素」への取り組みをアピールしなければビジネスに支障を来す時代になった。こうした中、再生可能エネルギーを供給する企業や、省エネルギーを実現する技術・製品を持つ企業に対する市場の評価が急速に高まっている。日本にも技術力で「脱炭素」を実現しようとしている企業がある。特集『2024年急成長の8テーマ 日本の最強技術79社』(全6回)の#4では、「脱炭素」業界の技術トレンドと市場予測、そして投資の観点から最注目の国内企業15社を厳選して紹介する。(環境エネルギージャーナリスト 本橋恵一)

日本は2035年までに温室ガス排出を66%削減へ
電力、製鉄業界は脱炭素の大波に飲み込まれる

 2023年11~12月、アラブ首長国連邦(UAE)でCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)が開催された。化石燃料を巡って先進国、途上国、産油国などが対立したが、最終的には「化石燃料からの脱却」で合意した。石炭ではなく化石燃料としたのは今回が初めてだ。また、30年までに再生可能エネルギーを3倍に増やすことなども合意された。

 気候変動枠組み条約の下にある「パリ協定」は、地球の平均気温の上昇を、産業革命の前と比べて1.5℃以下とするため、50年には「ネットゼロ」(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)を目指している。

 そして、今回のCOP28の最大のテーマは、そのための各国による温室効果ガス削減の進捗状況を評価する「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake)」だ。これは、ネットゼロを目標として世界全体の進捗状況を評価する仕組みのことだ。地球温暖化を抑制するには、目標の大幅な引き上げが必要といわれ続けてきた。エネルギーについては、化石燃料の消費抑制が求められている。

 結論を言えば、現在の各国の温室効果ガス排出削減は、目標の上でも政策の上でも十分ではない。日本も含め、今後はさらなる大幅な削減目標の引き上げが必須となってくるはずだ。

 日本の30年の温室効果ガス排出削減目標は、政府の国際公約として13年比で46%削減としている。さらに、23年のG7(先進7カ国)環境相会合では、「35年に19年比60%削減」で合意した。これは日本の13年比に当てはめると66%削減となる。

 30年の5年後にはさらに20%も削減する計算だ。そしてこうした数値は、24年度にも政府・経済産業省が取りまとめる予定の「第7次エネルギー基本計画」にも反映されるかもしれない。

 COP28での合意を受けて、日本も今後、急激な脱炭素化に向かう可能性がある。

 これは多くの企業に対し、今までと同じような事業をしていては生き残れない、と言っているに等しい。

 例えば、電力業界は脱炭素化の大波に対して最前線にいる。「大規模発電所から需要地に電気を届ける事業」から「消費者や大口需要家が安定した電気を使える事業」へと役割が大きく変わる。

 火力発電所が減少し、全国各地に太陽光など再エネの発電所が増えてくれば、事業の付加価値を生み出すのは、発電側ではなく、送電線や配電線などの「系統運用」、あるいは需要側のサービスとなってくる。

 製鉄業界も脱炭素化に直面している。そうした中、製鉄の主役は高炉から電炉に移行していくだろう。現在の製鉄の主流は、高炉に鉄鉱石と石炭から作ったコークスを入れ、鉄鉱石に含まれている酸素を取り除いて(還元)、鉄鋼にする。だが、その際に、1トンの鉄をつくるために2トンのCO2が排出される。そこで、水素による還元が研究されている。日本では水素や合成メタンなどを高炉で利用して、カーボンゼロの鉄鋼を生産する技術の開発が進められている。

 しかし、製鉄の主流はおそらく電炉になっていくだろう。電炉は一般的に、鉄スクラップを原料として鉄鋼をつくる設備である。CO2排出量は高炉の4分の1とされているが、電源が再エネになっていけば、CO2をさらに削減できることになる。鉄スクラップだけではなく、水素による「還元鉄」も利用できる。日本では電炉による製鉄は3割程度だが、米国では7割程度に達する。米国内で「鉄のリサイクル」が進んでいるということでもある。

次ページでは、2024年に注目の「脱炭素」関連企業、計15社を厳選し、それぞれ強みとなる注目ポイントと共に、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて紹介する。

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