2024年米長期金利はさらなる低下か、過剰貯蓄ほぼ消え米消費減速とインフレ鈍化へPhoto:PIXTA

これまで米国の個人消費の強さを支えた、大型の財政出動による過剰貯蓄も底を突き始めた。個人消費は減速し、インフレも鈍化していきそうだ。FRBも景気減速前の利下げを意識しつつある。2024年にかけて米国の長期金利はさらに低下していきそうだ。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

過度の景気抑制を避けたいパウエルFRB議長
米長期金利は大幅に低下

 2023年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では年内での利上げの終了が示唆され、24年に0.75%(3回)程度の利下げが行われる旨のドットチャート(メンバーによるフェデラルファンド金利の見通し)が示された。

 23年9月時点で示唆されていた0.50%(2回)程度の利下げより0.25%(1回分)利下げ幅が大きくなった程度で、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに対して積極的になったとは言い難かったのだが、FOMC後に米国債利回りは大幅に低下し、ドル/円も一時140円台まで下落している。

 市場参加者が注目したのはドットチャートではなく、FRBのパウエル議長の発言だ。

 パウエル議長は「2%のインフレ達成からかなり前に景気抑制を避けたい」と発言したのだが、まずインフレ目標(2%)が達成される前から利下げが可能であることを示唆している。

 また、景気抑制を避けたいとの発言は、ソフトランディングに向けた強い意思表示であり、景気が明確に減速する前の段階で「予防的」に利下げを行うことが重要との見解と市場に受け止められた。

 24年以降、米国のインフレ動向、政策金利、長期金利の動向はどうなるのか。次ページ以降予測、検証していく。