「不動産暴落」を煽る本は捨てなさい。信じると“まともな家”を買えない理由住宅価格は本当にこれから下がる一方なのか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

人口減少で不動産暴落危機?
「住宅価格は需給で決まる」は本当か

「人口減少が進んでいる日本では、不動産の需給バランスは悪化の一途を辿っており、価格は下がる一方だ」などと専門家が言ったとしよう。これを信じる人は多いかもしれないが、ではなぜマンション価格は10年以上も上がっているのだろうか。

「需給バランス」という最もらしい言葉は実社会では機能しないことも多い。市場実態の深い理解をなくして、不動産を語るのは最も危険な行為であり、大損の可能性が高いので気を付けた方がいい。

「価格は需要と供給で決まる」ということは、大学の経済学部を出ていなくても多くの人が知っている。それは人が日常的に買い物をしているため、日々実感するからだろう。しかし、どんな市場でも需給バランスによる価格メカニズムが機能するかと言うと、現実は違う。

 経済学では、価格が「粘着的」で下がりにくいケースがあることは昔から言われていた。これを「価格粘着性」と言うが、これは商品ごとに異なる。下がりにくいケースの一つに、供給者が少ない寡占市場がある。供給者同士で談合のようなことをされたら、価格は下がらなくなる。

 同じような商品が様々な供給者から供給されている場合、需給バランスは働きやすい。スーパーで毎日買い物をする場合、ほとんどの商品はこれに該当する。同じ商品でA社が値上げしたら、顧客はB社など他の商品に手を伸ばすことが多くなる。

 これを不動産に当てはめてみよう。

 新築分譲マンションの売主は「メジャーセブン」と言われる上位7社で5割近くのシェアがある。こうした会社は財務力もあるので、自転車操業的な経営はしていない。このため、売れ行きが悪いからと言って、値下げすることはほぼない。

 また、首都圏での供給戸数は2023年に2.5万戸程度になりそうだが、棟数で言うと300棟ほどしかない。これは1年間で見ると4駅に1棟に相当し、同じ駅でも北口・南口や駅近・バス便などの条件を考慮すると、同時に検討する競合物件の数は非常に少なくなる。「この物件の価格が高いから別の物件を」といった商品選択の代替性は高くない。比較されて顧客に逃げられる可能性が低い商品は、価格を下げる意味がさほどないものだ。