ビール各社は、2023年10月の酒税改正によるビール減税の追い風に沸いた。カテゴリー別で、23年にビールが復調の気配を見せる一方で、大きな動きがあったのが新ジャンルだ。長年、売り上げトップを維持してきたキリンビールの「のどごし生」が首位から陥落し、サントリービールの「金麦」が抜いたのだ。首位交代は18年ぶりとなる。酒税改正などで競争環境が激変する中で、両社のブランド戦略の明暗が分かれた。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
新ジャンルは約9円の値上げで逆風
18年ぶりに首位交代で金麦がトップに
前年比12%減――。「社内ではあまり話題になっていないが、もっと危機感を持つべきだ」。キリンビールの社員は、ある数字にそう悔しさをにじませる。
1月中旬、大手ビール4社の2023年の実績が出そろった。23年10月の酒税改正で、ビールは350mlあたり6.65円の減税となり、各社のビールの売り上げが大きく伸びた。
その一方で、新ジャンルは350mlあたり9.19円の増税となった。逆風下にある新ジャンルでひっそりと起きていたのが “下克上”だった。
新ジャンルで17年間にわたり首位を堅持してきたキリンの「のどごし生」を、後発であるサントリービールの「金麦」が抜いたのだ。冒頭の数字は、のどごし生の23年の販売数量の落ち込みである。二桁減という“大失速”だった。
次のページでは、ダイヤモンド編集部が入手したキリンとサントリーの両ブランドの販売数量を公開する。併せて、長らく首位を維持してきたのどごし生の失速につながった、キリンのブランド戦略の誤算についても解説する。