昨年、日本製鉄は米鉄鋼メーカー大手USスチールの買収を発表した。買収額は、日本円で2兆円にも上るという。中国勢の台頭などでプレゼンスの低下が続いていた日米勢は、これを機に復権を遂げられるのか。特集『進撃の日本製鉄』の#2では、日本や米国の鉄鋼メーカー“没落”の歴史をたどりながら、超大型買収の真意と勝算を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
米鉄鋼大手USスチールを2兆円で買収
成功すれば「グローバル1億トン」に前進
昨年12月、日本製鉄(日鉄)が米鉄鋼大手USスチールを買収すると発表し、鉄鋼業界に衝撃が走った。
USスチールは120年にわたって米国経済を支えてきた名門企業であり、年間の粗鋼生産量で1500万トン近くを誇る。詳細は次ページで述べるが、このM&Aが成功すれば日鉄は計算上、粗鋼生産量で世界3位に躍り出ることになる。目標としてきた「グローバル1億トン」に大きく近づくことになるのだ。
買収金額は、日本円で約2兆円。その金額もさることながら、「日本勢が米国を代表する鉄鋼メーカーを買う日が来るとは、隔世の感を禁じ得ない」(日鉄グループベテラン社員)と、買収そのものに対する驚きの声が各所から上がる。
現時点では、買収成立は確約されていないが、日鉄幹部は「USスチールとのタッグが世界の鉄鋼業界に与える影響は大きい。実現すれば、グローバルでの当社のプレゼンスがぐっと高まる」と胸を張る。
この発言の背景には、日米の鉄鋼メーカーが世界市場での存在感を低下させてきた苦悩の歴史がある。日鉄幹部が日本勢“復権”への期待に胸を膨らませるのは当然だろう。
果たして、日本勢は本当に復権を遂げられるのだろうか。
次ページでは、日本や米国の鉄鋼メーカー“没落”の歴史をたどるとともに、日鉄への融資を決めた大手銀行や鉄鋼業界の幹部の見方を紹介しながら、「超大型買収」の真の狙いと勝算を明らかにする。