米アップルに対して投資判断の引き下げが相次いだことで株価が下落し、同社の時価総額は2024年に入り一時、約1620億ドル(約23兆4000億円)減少した。一方でアップルは1月8日、新商品の「Vision Proを2月2日に発売する」と発表した。iPhoneに続く新しい製品を生みだし、ビジネスモデルを変えることができるか、投資家は厳しい目を向けつつある。巻き返しとなるだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
米アップルの高成長は「限界」なのか
2023年の世界の株式市場は、「マグニフィセント・セブン」(偉大な7社)と呼ばれる、IT関連の先進企業にけん引され上昇した。それは、アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、メタ、エヌビディア、テスラを指す。ジェネラティブAI(人工知能)の発展や電気自動車(EV)普及の期待から株価は大きく上昇し、世界の株式市場を力強くけん引する役目を担った。
ところが最近、アップルの出遅れが鮮明化している。需要が飽和しつつあるiPhoneの、「次の目玉」が見えてこないからだ。
AIの利用によって、米IT先端企業はビジネスモデルを変え始めた。グーグルや韓国サムスン電子は、AIを搭載したスマホの販売を強化している。しかし、アップルはAIの取り込み具合がやや遅れ気味だ。高成長へのプロセスが描きにくい状況に、米英の金融機関のアナリストは、投資判断を引き下げた。年初から1月5日までの間、アップル株は5.9%下げた。
今後、アップルがiPhoneに続く新しい製品を生みだし、ビジネスモデルを変えることができるか、投資家は厳しい目を向けつつあるようだ。それが難しいと株価はさらに調整するかもしれない。そのタイミングで米国の景気減速懸念が高まると、マグニフィセント・セブンという言葉自体が陳腐化してしまうことも懸念される。