Bコープ認証を取得する
意義とメリット
――中小企業やスタートアップが、Bコープ認証を取得する意義やメリットは何ですか。
意義は、BIAアセスメントが「良い会社」になるための一つの基準になることです。「良い会社」のイメージはさまざまですが、Bコープの考え方に基づくそれは、経済的価値と社会的価値の創造を同時に追求していく会社です。そういう思いがあっても、実際どうすればいいかわからない経営者や起業家は多いはずなので、実践するための一つのモデルになります。
もっと具体的な意義や効用を挙げていくと、まずは世間の評判が良くなります。個人のお客さまでも法人顧客でも、商品を買う際に、Bコープとそうでない企業の選択肢があって、その商品の品質や価格に差がなければ、社会的評判の高いBコープの商品を選んでくれる可能性は高いはずです。
当社の場合では、顧客数は着実に増えています。総売上高では微増ですが、取引数は増えています。これがBコープ認証のおかげか、他の要因によるものかはわかりませんが、Bコープの認知が広まればその効果は表れてくるのではないかと期待しています。実質が伴い社会的評判が高いことは、公共工事であれば、前向きな判断材料になるのではないでしょうか。
また、従業員のやる気や意識が高くなる効果は大きいです。当社は昔からこの横浜市栄区笠間の地域企業としての意識が高く、顧客満足の高い経営や環境保全経営も心掛けてきました。その点を評価してもらって、社外から多くの表彰をいただいています。
Bコープ認証はその中の一つです。その認証マークが入った名刺をお客様や取引先に渡して、それを評価していただくことで、従業員の意識はより高まっていきます。私自身も海外で、マーク入りの名刺を渡した際に、「すごい」「驚いた」と言われ、当社が誇らしかったです。
顧客満足度の向上や、地域社会・環境を考慮した仕事を心がけるように、常日頃から従業員教育していますが、その効果が第三者機関に表彰されたり認証されたりして、「見える化」すると、私も従業員も矜持とともに緊張感をもち、自らの襟を正すことにつながります。
――そうした経営は、いつから実践してきたのですか。
2000年頃から、CSRや企業の社会貢献ということには関心がありました。この思いを強くしたのは、父が創業した石井造園を事業承継して、私が社長に就任した時です。父から「会社経営は、景気や経済変化で、どうにもならないことがあるかもしれない。もしそうなっても、この会社は自分が創業した会社だから、仕方がないと思う。だけど、石井家は笠間の地で300年以上、13代もご恩を受けてきたから、この地域に対して責任ある行動をしないといけない」と言われたのです。
自分は、この会社をどうしようかと、真剣に考えました。そして、まず従業員が仕事を通して幸福になること、次にお客様や取引先がその仕事を通じてその幸福を共感できること、そういう会社にしようと思いました。具体的には、一人一人の社員が成長し、社会に対しての存在意義を感じてもらうようにし、そのうえでその仕事の成果に見合った報酬を渡すことです。また、品質の良い社員が誠意をもって仕事し、きちんと約束を果たすことで、お客様や取引先に幸福を共感していただこうと考えました。
経営理念とCSR方針も新たに打ち立てました。その後、少し修正して、現在の経営理念は「企業活動を通して、幸せを共有する企業を目指す」です。この理念に基づいて、なりわいの全てにおいて地域志向CSR方針を打ち立て、事業を展開しています。
また、年度ごとのCSR目標を立て、年度末に振り返り、新年度に入ってすぐにCSR報告書を作成してステークホルダーに配布しています。同時に、本社でCSR報告会を開催しています。そこには、従業員やその家族、お客様や取引先、地域を代表して笠間連合町内会の方や横浜市の職員の方などをお招きしています。
――CSR報告書では、いろいろな活動を詳しく紹介していますね。
はい。当社は特に、地域貢献と環境保全の活動に注力しています。その中の一つに、2008年当社独自に設立した緑化基金があります。1年間に集めた基金を、学校や公共施設などの緑化活動のために使用します。基金の集め方は、お客様から発注いただいた工事金額の下3桁を基金として集め、そこに同額を当社が上乗せします。前年度は516,706円になりました。これは基金開始初年度の8倍です。それに比例するお客様の数が増えているのです。CSR活動を通して、地域との交流が深まり、お客様の数が増えていると考えています。
その他、毎年の環境負荷報告やカーボンオフセットの取り組み、地元の小学校を対象にしたSDGs関連の催し、本社スペースでのマルシェ開催などをCSR報告書とウェブサイトで情報発信しています。
こうした継続的なCSR活動を、最初にお話しした雨宮先生が評価してくださり、明治大学での先生の講義にお招きいただき、それが縁でBコープ認定へのチャレンジにつながりました。(了)