和歌山県の紀陽銀行が、隣接する大阪府に進出したのは73年前のことだ。近年、他県の地方銀行も大阪に進出し競争環境は厳しさを増すが、紀陽銀行は今後も貸出先シェアを伸ばせると豪語する。そのための秘策は何か。原口裕之頭取に聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
大阪で「地元顔」する和歌山の地銀
さらなる貸し出し増へアクセル全開!
――2024年の経営環境をどう見ていますか。
ようやく「金利のある世界」が見えてきたところでしょうが、やはり重要なのは経済の動向です。企業によっては原材料高や円安、人手不足といった個別の問題もあります。
そうした中、われわれとしては大阪エリアに積極的に展開していくことになると考えています。
――その大阪に紀陽銀行が進出したのは73年前とのことですが、どういう経緯で進出したのでしょう。
地図を見ればよく分かるのですが、紀陽銀行の本店がある和歌山市から、大阪府北部と和歌山県南部はおおむね同じ距離にあります。
人口や経済規模、事業所数で比較すると、大阪は和歌山のほぼ10倍です。それほどのマーケットが近隣にあるわけですから当然、当時の経営陣が進出を判断したわけです。それが今に至るまで続いています。
例えば預金や融資などを行うフルバンク機能を備えた店舗数は、大阪が23店舗で和歌山が10店舗。貸出金の構成は、和歌山の企業への貸し出しが34%に対し、大阪は54%です。
他の銀行ではあまりないデータかもしれませんが、従業員や役員の出身地は大阪と和歌山でほぼ半数ずつです。大阪で採用し、大阪でしか営業経験のないまま退職される従業員もたくさんいます。
何を言いたいかといいますと、われわれは和歌山と大阪の両方をメインのマーケットとし、いわゆる“地元顔”している銀行であるということです。73年前に大阪に進出し、今は完全に地元のエリアであるというのがわれわれの認識なのです。
――その大阪は金融機関の競争も厳しい。紀陽銀行は「地元顔の銀行」として、どれほど浸透しているのでしょうか。
紀陽銀行は1997年に「取り付け騒ぎ」が発生するなど、過去に経営危機を経験している。また現在、293億円の有価証券評価損を抱え、益出し余力ランキングは地方銀行100行中78位と低位にある(本特集#1『地銀100行「益出し余力」最新ランキング!“金持ち地銀”1位は京都、“貧乏地銀”のダントツ1位はSBIの提携先銀行』参照)。だが、そうした「貧乏地銀」であるが故の戦い方があると原口裕之頭取は明かす。さらに他行にはない「武器」の存在も明らかにした。それは何か。次ページでインタビュー全文を公開する。