シリコンウエハー、その研磨材、回路形成に必須のフォトマスク……半導体の製造に必須の重要素材で高い世界シェアを持つのが日本企業だ。日本勢でトップシェアの製品、ニッチだが1社でシェア100%の製品を持つ企業も多数ある。これらの企業は半導体市況の活況を受けて受注が急増しそうだ。特集『半導体 投資列島』(全9回)の#4では、半導体素材で“日本が最強”の理由と、投資の観点から最注目の国内企業15社を厳選して紹介する。(丸三証券アナリスト 宮原秀和)
シリコンウエハー、フォトレジスト、絶縁材料…
半導体素材で日本が“世界標準”を取れる理由
半導体の空前の活況を追い風に、高品質の「素材」を供給し、世界で高いシェアを持つ日本の素材メーカーに市場関係者の注目が集まっている。
大量の半導体チップを製造する円盤状の土台ともいうべき「シリコンウエハー」や、半導体回路の形成に用いられる感光性材料の「フォトレジスト」、電気を通さない「絶縁材料」などで、日本勢の存在感は大きい。
シリコンウエハーを例に挙げると、“イレブン・ナイン”と呼ばれるシリコン純度を「99.999999999%」まで高めたインゴット(塊)を製造する工程や、そのインゴットを切断し平坦に磨く工程などで、極めて高い精密性が要求される。素材に微量でも不純物が混入すると、完成した半導体は、たちまち不良品となるためだ。
国内の素材メーカーは、高機能の素材を安定した品質で供給し続け、顧客である世界の半導体メーカーから高い信頼を得ている。
日本勢が強い要因は、主に二つある。一つは製造技術が模倣されにくい仕組みを構築していることだ。素材の製造工程においては、試行錯誤や微修正を繰り返し、高品質品を生み出す「擦り合わせ技術」が結集されている。そうした技術をあえて特許化せずにノウハウとして持っているため、競合企業は簡単に追い付けない。
もう一つは、長期目線で研究開発を行う文化があることだ。海外勢が短期的な利益(結果)を求めるのに対し、日本勢は長い時間軸での基礎研究や新製品の開発が許容されてきた。これは、競合がほぼ存在しない「デファクトスタンダード(事実上の業界標準)」を生み出すための重要な条件の一つだ。
日本の半導体素材メーカーの中には、特定の素材で“世界シェアがほぼ100%”という「オンリーワン企業」が多数ある。また、ニッチ(規模が比較的小さい専門的市場)で世界的シェア首位の「グローバル・ニッチトップ」もひしめいている。
次ページでは、世界トップシェアの素材を持つメーカーや「シェア100%」の素材を手掛けるメーカー15社について、それぞれ強みとなるポイントと共に、今期と来期の予想増益率、予想PER(株価収益率)を銘柄表にまとめて一挙紹介する。
加えて、日本勢が高いシェアを持つ素材とその供給企業も一覧表で紹介する。