オープンハウスグループの創業者、荒井正昭代表取締役社長はわずか一代で同社を、売上高1兆円を突破する大企業にまで育て上げた。荒井氏がトップの座を譲る気配はまだまだないが、そのカリスマ創業者の後ろに「次は俺だ!」と鼻息の荒い猛者たちが控える。特集『住宅メーカー最終決戦! 戸建てバブル崩壊秒読み』(全6回)の#3では、次期社長レースで浮上する有力幹部6人の実名を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
母親から「やってから言え」と育てられ
日本を代表する経営者になった荒井氏
オープンハウスグループは1997年9月、東京・渋谷で産声を上げた。不動産仲介会社でトップ営業マンだった当時31歳の荒井正昭代表取締役社長が、同僚2人を引き連れて創業。不動産仲介のセンチュリー21・ジャパンの加盟店として、新築一戸建ての売買仲介事業をスタートさせた。
「母親から『やってから言え』と育てられた」と語る荒井氏は、不動産仲介の営業マンにありがちな酒もゴルフもやらず、仕事に明け暮れた。自らモーレツ営業を体現し、瞬く間に売り上げを伸ばす。2001年に自社開発の新築一戸建ての販売を始めたほか、08年にはマンション事業にも進出するなど、事業を次々と拡大した。
そして、12年9月、満を持して“独立”を宣言。センチュリー21とのフランチャイズ契約を解除し、自社ブランドでの営業を開始した。13年9月、オープンハウスは東京証券取引所一部上場を果たした。
それから10年。飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げ、オープンハウスは売上高を10倍以上も拡大して1兆円を超える大企業に上り詰めた。平成以降に創業した企業で売上高1兆円超えを達成したのは、楽天グループに次いで2社目だ。荒井氏は、日本を代表する名経営者の一人に名を連ねた。創業当初は3人だった従業員は、いまや4904人(23年9月末時点)にまで膨れ上がった。
創業から27年目に入ったオープンハウスで今も経営の最前線に立つ荒井氏は、現在58歳。かつて社員の前で、本気とも冗談ともつかない様子で「60歳くらいには引退しようかな」とこぼしていた。無論、売上高1兆円という大台を達成しても、荒井氏がトップの座を譲る気配はない。
「不動産業界日本一」という壮大な野望に向けて、荒井氏はバリバリの現役を貫く方針だ。ガバナンスやコンプライアンスの強化、さらなる業績拡大に向けた事業の多角化を進めるために、先頭に立って采配を振る。
とはいえ、いずれは後継者にバトンを譲らなければならない。わが子のように大切に、そして大きく育ててきたオープンハウスを託すのは、果たして誰になるのか。
カリスマ創業者からバトンを受け継ぐ2代目社長は、どうしても創業者と比較されるため、相当なプレッシャーがかかる。それでも、オープンハウスには「次は俺だ」と血気盛んな猛者たちが控えている。
荒井氏に鍛え上げられたモーレツ営業でのし上がってきた幹部の顔触れは多士済々だ。彼らは次世代のリーダーとして、オープンハウスの業績拡大をけん引してきた。
次ページでは、オープンハウスグループの次期社長レースで浮上する有力幹部6人の実名を明らかにする。いずれも若くしてリーマンショック、コロナショックの修羅場をくぐり抜けてきた侍たちである。