ビジネスでも日々の生活でもなくてはならないデジタル技術。日夜進化を続け、これまでの常識では考えられないようなテクノロジーも生まれている。デジタル時代になってさまざまな問題が起こる中で、今注目を集めているのが「デジタルエシックス」(デジタル倫理)。デジタルエシックスとはどんなものなのか、これからの社会にどのような影響を与えるのか――。その問いに答えるのが、新刊『デジタルエシックスで日本の変革を加速せよ』である。今回、そのイントロダクション部分を特別公開する。

デジタル技術とよりうまく付き合うために必要な1冊〈PR〉

倫理(エシックス)は
どのようにデジタル社会と付き合っていくかを考えるツール

 昨今の深層学習の進化や生成AIによる変革により、世界のデジタル社会は大きく変わろうとしています。2023年は、日本でもChatGPTブームが起こり、これほどAIの技術が日本社会で話題になった1年はなかったと思います。

 一方で、社会のデジタル化という面から見てみると、世界デジタル競争力ランキングにおいて、日本は2023年もビッグデータとアナリティクス活用の指標で64カ国中最下位にとどまり、世界から取り残された状況にあります。

 この現状をどう捉えたらよいのでしょうか。

 日本社会の平均年齢はすでに48.1歳(国立社会保障・人口問題研究所推計)であり、これからさらに高齢化が進むことが予想されています。また、ピークであった1995年には8716万人だった生産年齢人口も、総務省の推計では2065年には4529万人になり、どんどん人手が足りなくなる状況です。

 デジタルというと、最近のデジタル犯罪やSNSでの誹謗中傷などの負の側面もあって、もう十分と思われている方もいらっしゃると思いますが、その一方で、スマートフォンで気軽にわからないことを調べられるなど、社会活動に大いに役立っている面もあります。

 このように、正負の両側面を持つデジタル技術に対して、日本社会、そして一人一人の市民としてデジタルとどう付き合ったらよいかという問題はより難しくなっており、もう使わなくてもいいや、プライバシーが心配だからあまり手を出さなくてもよいのでは思ったりする人ももしかしたら多くなっているかもしれません。

 デジタルの技術を使うか使わないかはもちろん個人の選択に任されていますし、強要されるような社会は望ましくありません。ただ一方で、電子決済やマイナンバーカードなど、社会にデジタル技術を使ったサービスが増えてきているのも確かです。

 このような社会状況の中で、どのようにデジタル社会と付き合っていくかということを考えるために役立つものの一つに、「倫理(エシックス)」があると考えています。