中古車販売大手のビッグモーターによる保険金不正請求に端を発した一連の問題は、SOMPOホールディングスと損害保険ジャパンに対する行政処分が下されたのに加え、両トップの辞任という幕切れを迎えた。そこで金融庁が公表した行政処分の文書をひも解くことで、改めて問題の所在を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
厳しい言葉がずらりと並んだ
金融庁の業務改善命令の文書
Q 中古車販売大手ビッグモーター(BM)による保険金の不正請求をめぐる問題ですが、1月中旬から月末にかけて慌ただしかったですね。
A そうですね。1月16日には、損害保険ジャパンの親会社SOMPOホールディングス(HD)が社外調査委員会による最終報告書を公表しました。そして、同25日には金融庁がSOMPOHDと損保ジャパンに対して業務改善命令を下し、翌26日には両社が記者会見を開きました。
Q 金融庁による記者への説明会や記者会見も長い時間がかかったそうですね。
A 記者説明会は2時間超、記者会見は3時間超と共に長丁場でした。金融庁による行政処分の中身や、会見ではSOMPOHDの櫻田謙悟グループCEOの経営責任に加え、社外取締役で指名委員会委員長のスコット・トレバー・デイヴィス氏も登壇したこともあり、質問が途切れませんでしたね。
Q 今回、金融庁や調査委員会が指摘した内容とはどのようなものでしょうか。
A 26日の会見でSOMPOHDと損保ジャパンが公表した資料を見ると分かりやすいと思います。
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Q 「歴代社長を含む経営陣の下で醸成された企業文化」が断罪されたのですね。
A 「顧客の利益より自社の営業成績に価値を置く」や「上司の決定に異議を唱えない上意下達」、「ネガティブな情報が適時適切に報告されない」など、金融庁はかなり厳しい指摘をしています。
Q 金融庁が公表した行政処分の文書を読みましたが、辛辣な言葉が多かったですね。
A そうですね、ちなみに、公表された文書は13ページの概要版ですが、両社が提示された完全版は100ページほどあるようです。概要版は処分事由だけをピックアップしたものですが、完全版の方には体制面も含めてかなりシビアに指摘しているようですね。
Q 100ページですか。相当細かく検査したのでしょうね。
A そのようです。ヒアリングだけでなく、メールの復元や、役員間の情報共有に使用しているコミュニケーションツールも全てデジタルフォレンジックにて検査を行い、主要人物に関しては過去10年分をチェックしたようです。
Q そんなに調べたのですね!その結果が100ページの完全版だと。でも、「業務停止処分が出るのでは?」とのうわさもありましたが、結局は業務改善命令にとどまりましたね。