このようにみなさんが投じたお金によって企業が利益を上げると、保有する株式に応じて配当を出すことができますし、企業価値が上がれば、株価も上昇します。

 つまり投資した人は、企業の成長の果実として、配当をもらったり、株を売却して値上がり益を手にしたりできるわけです。

 この仕組みからわかるように、株式投資の場合、企業が成長すれば、投資した人たち全員がその果実を手にできます。このように「プラスサム(合計がプラス)」であることが、投資の重要な本質です。

 では、株式投資が最適な方法なのでしょうか?

 50代で老後の資金を増やしたり守ったりするという目的では株式投資はおすすめしづらいのが正直なところで、私は選びません。

 もし資産形成のために株式投資をするのであれば、伸びる会社を見極めて、長期でじっくり投資をすることが重要なのです。

 しかし、たとえ長期投資で臨むとしても、老後の資金をつくる目的であれば、私はやはり株式投資は選びません。なぜなら、個別の株式への投資では十分なリスクの「分散」ができないからです。

 たとえば、みなさんが100万円を運用しようとした場合、よく知っている企業の株式を買おうとすれば、おそらく十数銘柄しか買うことができないでしょう。多くの企業の株式は100株などまとまった単位で購入することになるため、仮に株価が1000円であれば、最低投資金額が10万円ということになってしまいます。十数銘柄しか保有していない状態では、そのうちの1社でも株価が急落すれば、資産価値に大きなマイナスの影響を与えることになります。

 有名な投資の格言に「卵は1つのかごに盛るな」という言葉がありますが、これは「複数のかごに卵を分けて盛っておけば、たとえそのうちの1つを落として卵が割れてしまっても、他の卵は無事にすむ」ということを意味します。

 投資の世界では、リスクを抑えるために「いかに投資先を分散するか」が重要なカギを握るのです。自分の持っている金額では十分なリスク分散ができないということであれば、資産づくりの中心に据えるのはやめ、趣味の範囲で楽しむほうがよいかもしれません。

外貨預金もマンション投資も
実は安全とは言いがたい

 値動きのある金融商品の中で、多くの人が始めやすいと感じるのは「外貨預金」かもしれません。外貨預金には、円以外の通貨を持って「通貨の分散」をはかるという効果があります。円預金だけを持っている状況と比べれば、外貨預金を始めるというのも悪い選択肢ではありません。