北朝鮮「韓国は敵対国」発言や異例の日本向け談話、新たな緊張の裏にある“従来と違う事情”北朝鮮にとっては、とりわけ米国とロシアが明確な対立関係にある状況は好ましいと考えているのだろう(写真はロシアの宇宙港ボストーチヌイ宇宙基地を視察するロシアのプーチン大統領=右と北朝鮮の金正恩委員長)Photo:Anadolu/gettyimages

朝鮮半島は火を噴くのか?
北朝鮮首脳の言動で新たな緊張

 北朝鮮の金正恩総書記は昨年末の朝鮮労働党中央委員会総会で、韓国とは「同族関係ではなく、敵対的な国家関係、交戦国」として、故金日成主席以来の南北統一の理念の放棄とさらなる軍備増強を表明した。

 その一方で、1月5日付で日本に向けて、能登半島地震へのお見舞い電文を送り、2月16日には妹の金与正氏が、岸田文雄首相の訪朝に言及し関係改善の可能性を示唆するかのような「談話」を突然、発表した。

 背景には、南北朝鮮のお互いへの向き合い方が大きく変わったことがある。

 韓国の尹錫悅政権が、前任の文在寅政権の対北朝鮮融和政策から、安全保障を優先し北朝鮮と是々非々で対峙(たいじ)していく政策に変更、また韓国と米国、日本の連携強化が進むことを意識して、揺さぶりをかける狙いもあるとみられる。

 だがそれだけなのか。北朝鮮は戦術核・ミサイルの実戦配備を匂わせ、過去2度失敗に終わっていた軍事偵察衛星の打ち上げに成功したとする。2018年の南北軍事合意も有名無実化し、南北軍事境界線周辺での軍事活動が活発化する。

 南北の軍事対立は今に始まったわけではないが、最近の情勢の緊迫は従来とは異なる要因があることを見過ごしてはならない。