オイシックス・ラ・大地によるシダックスの株式買い取りを複雑化させたのが、コロワイドら第三者によるシダックスへの買収提案だ。創業家と取締役会の対立は、情報漏えいや怪文書が飛び交う騒動に発展する。そして創業家側が繰り出した一手が、労働組合を巻き込んだ「買収提案つぶし」の謀略だった。特集『シダックス 謀略ゲーム』#2は、そうした「禁じ手」の中身を暴き出す。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
事業子会社4社長のTOB賛同表明の次に
シダックス創業家側が画策した「謀略」とは?
コロワイド提案をつぶす――。
シダックスの調査委員会が2023年3月にまとめた非公表の調査報告書には、そんな物騒な言葉が書かれたメールが実際に登場する。
コロワイド提案とは、「牛角」や「かっぱ寿司」などを展開する外食大手のコロワイドが22年6月、シダックスに対して行ったものだ。シダックスの給食などフードサービス事業の価値を「400億~500億円」と算定し、その株式の51%以上、最大100%を譲り受けるとシダックス側に提案した。
報告書によれば、この提案内容がオイシックス・ラ・大地に漏えいし、オイシックスは22年8月30日にシダックスのTOB(株式公開買い付け)を開始した。
だが、これにシダックス取締役会が反対。既にコロワイドから提案を受けていたことから、いずれの候補先に株式を売却することがシダックスの企業価値向上に資するのか、詳細に比較検討を行う必要があるというのが反対の理由だった。支配権の変動を伴うTOBの際、取締役会がその必要性や合理性をしっかりと検討し、株主に十分な説明を行うことはコーポレートガバナンス(企業統治)の原則だ。
本特集#1『【内部資料入手】シダックス取締役会に圧力!敵対的買収者オイシックスが仕掛けた「謀略」の全貌』で明らかにしたように、投資ファンドのユニゾン・キャピタルが保有していたシダックス株をオイシックスに売却させたいシダックス創業家は、オイシックスと共謀し、事業子会社4社長があたかも自発的にTOBに賛同しているかのように世論を誘導する工作を実行した。
だが、事業子会社の代表者がTOBに賛同したとしても、冒頭のコロワイド提案がある以上、取締役会のTOB反対は覆らない。だからシダックス創業家、オイシックス、そして双方に雇われたコンサルタントらには、コロワイドの提案を何としてでももつぶしたい動機があったのだ。
その水面下でどのような「謀略」が図られたのか。次ページで明らかにする。