巷では「DX」「DX」の大合唱が呪文のように続いています。しかし現場からは、「仕事が増えただけで売上はなかなか上がらない」という悲鳴が聞こえてきます。そんな悲劇を解決すべく、1000社以上の問題を解決してきたITコンサルタント・今木智隆氏が書き下ろしたのが『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)です。本連載では、さまざまなデジタルの「あるある」失敗事例を挙げながら、なぜそうなってしまうのか、どうしたら問題を解決できるのかをわかりやすく丁寧に解説していきます。ECサイトやSNSの運営に携わっている現場の方、デジタル広告やデジタルマーケティングに関わっている現場の方はぜひご一読ください。
顧客のデータを取ろうと躍起になるな
みなさんもご経験があると思いますが、ウェブサイトで資料請求をしたり、サービスの申し込みをする際、ものすごい量のアンケート項目が出てくることがあります。氏名や連絡先ならともかく、職業に年収、趣味、家族構成まで入力必須項目にしているフォームが表示されると、うんざりしてしまいますね。
確かに、自分がモノやサービスを売る立場になったら顧客の情報をあれこれ知りたくなるものですが、誰しも自分の情報はできる限り他人には教えたくないものでしょう。
せっかくサービスに申し込む気になっている顧客が、大量の質問に嫌気が差して離脱してしまうようでは、本末転倒です。入力しなければならないフォームの項目を1つ増やすたび、購入者は確実に減っていくと思っていてください。
入力フォーム以外にも、顧客をいらだたせる要素はたくさんあります。いきなり、チャットウィンドウが開いて「何かお困りではありませんか」と尋ねてきたり、商品を購入しようとしたら「こちらもいかがですか」と的外れな商品をおすすめされたり。
顧客の立場になってみれば、そんなものはない方が良いに決まっています。
上司から「見込み顧客の情報をもっと手に入れろ」と責められて質問項目を増やしたら、資料請求の件数や売上が減ってしまい、さらに上司に責められることになった……。笑い話のようですが、これはどの企業でもやってしまいがちなことです。
顧客のデータを得ようと躍起になればなるほど、顧客に敬遠され、本当に必要なデータも取れなくなってしまうものなのです。
※本稿は『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。