34年ぶりに日経平均株価が最高値を更新したことでメディアや市場関係者は盛り上がっている。株高はバブルなのか。それとも株価上昇は引き続き見込めるのか。緊急特集『日経平均株価「最高値」の虚実』の#4では、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストに解説してもらった。
34年ぶりの最高値更新は騒ぐほどの話ではない
配当込みのトータルリターンは58%上回る
日経平均株価が終値で3万9098円をつけて史上最高値を更新した2024年2月22日、多くのメディアや市場関係者は「待ってました!」とばかりに盛り上がった。なにせ1989年12月29日以来、約34年ぶりの高値更新とされるだけに注目が高まるのも無理はないが、二つの理由で騒ぐほどのことではない。この機会に株価指数の本質を考えたい。
まず、投資家の観点からすると、日経平均は第1次岸田文雄政権が発足する約1年前の20年11月に史上最高値を更新していた(月次終値ベース)。不思議に思われるかもしれないが、普段よく見聞きする日経平均株価とは別に、「日経平均トータルリターン・インデックス」という株価指数がある。
通常の日経平均は配当金を考慮していない(配当金はゼロとして株価の変化だけを指数化している)。これに対してトータル・リターンインデックスとは「配当込み日経平均」のことで、日経平均採用225銘柄の配当金を指数の計算に含めたものだ。
「投資家の観点から」というのは、例えば日経平均連動型インデックスファンドに投資すれば、当然ながら配当金を受け取れるので、投資成果の指標としては配当込み日経平均の方が適切だ。
上図の通り、2月22日時点で通常の日経平均は89年末を0.5%上回る程度だが、配当込み日経平均は89年末を58%も上回る。特にコーポレートガバナンス改革の進展などで増配が続いた直近10年ほどは配当有無で指数の差が大きく開いた。
株価は34年前のバブル当時と同水準だが、内容は全く違い、現在はバブルでも何でもない。