日経平均株価がバブル期から約34年ぶりに史上最高値を更新したのは実体経済の反映ではなく「物価高」「金融緩和」「円安」の循環と相乗効果によるものだ。日銀のマイナス金利解除や米国景気減速を機にスパイラルは逆回転するリスクがあり、高値更新に浮かれている場合ではない。緊急特集『日経平均株価「最高値」の虚実』の#5では、野村総研エグゼクティブエコノミストの木内登英氏の寄稿をお届けする。
22日に続き26日も最高値更新
生活実感から乖離した水膨れの株高
日経平均株価は、2月22日、3万9098円68銭(終値)を付け、1989年12月29日に付けたこれまでの最高値(3万8915円87銭)を上回った。
週明けの26日も続伸して3万9233円71銭(終値)まで上昇し2営業日連続で最高値更新になった。
しかしバブル期と同じ株価水準といっても、多くの個人にはその実感は乏しいのではないか。
足元の経済状況は悪化している。2023年10~12月期の実質GDPは、前期比年率-0.4%と2四半期連続で減少した。マイナス成長は24年に入っても続いている可能性が考えられる。物価高の強い逆風にさらされている個人消費はとりわけ弱い。
こうした経済状況とバブル期の史上最高値を上回った株価の動きとの間には大きなズレがある。個人にとっては、まさに「実感なき株高」だ。
重要なのは、足元の株価上昇は、日本経済や企業の成長力向上、生活水準の向上をもたらす労働生産性上昇、国際競争力向上といった「実質値」の改善を背景にしているとは考えられない点だ。
株高を支えているのは物価高という「名目値」によるものであり、水膨れの株高ともいえる。
さらに、歴史的なインフレ下でも続く異例の金融緩和も、実質金利(名目金利-期待インフレ率)の低下と円安の双方を通じて株高を強く後押ししている。株高現象は、名目値の水膨れとともに金融現象による金融相場の複合の様相だ。
高値更新に浮かれている場合ではないのではないか。