楽天グループの株価は2023年12月期決算発表を受けて急上昇した。携帯電話事業の赤字削減に加え、今期の社債償還を乗り越えたことが主因だ。だが、携帯事業の収益改善は危うく、来期以降も巨額の社債償還が迫る。特集『バブル再来!株価を動かす重大ニュース 人事、再編、物言う株主の思惑…記者が総力取材』(全18回)の#15では、依然としてくすぶる「楽天解体」の危機の実態を明かす。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
携帯事業は法人依存で単価は下落
再び迫り来る巨額の社債償還危機
2月15日、楽天グループの株価が一時制限値幅の上限(ストップ高)になるまで急上昇した。
その後も高い水準で推移しているが、きっかけになったのは2月14日の2023年12月期の連結決算発表だ。5期連続の最終赤字だったにもかかわらず株価を上げたのは、携帯電話事業の赤字縮小が確認されたためだ。
携帯事業の営業赤字は3375億円で、前年同期の4792億円から圧縮。注目の契約数は、23年12月末で609万件(災害など緊急時の「BCP」対応契約を含む)となり、10~12月の3カ月で87万件増加した。
もっとも楽天の携帯契約の増加をけん引しているのは、楽天市場の出店者を中心とする法人契約だ。個人契約に比べて1人当たりの売り上げが少ないのが法人契約の特徴で、10~12月期のARPU(1契約当たり月間平均収入)は1986円と7~9月期に比べて60円下がっている。
楽天は携帯事業の黒字化に必要な契約数は800万~1000万件、ARPUは2500~3000円としているが、法人依存のままではARPUの押し上げは難しく、道のりは厳しい。
3月8日、楽天の三木谷浩史会長兼社長は、東京都内で開いた法人顧客向けイベントで、契約数が630万件を超えたことを明らかにしたが、依然として法人頼みの契約増が続いている。
携帯事業の収益改善の実態は危ういが、株価上昇のもう一つの要因が、資金繰りの改善である。
楽天は巨額の設備投資の資金を確保するために大量の社債を発行してきたが、その償還額は24年から27年までの4年間で実に1.2兆円を超える。
24年の社債償還は“借金先送り”によって乗り越えたが、来期もまた巨額の社債償還が迫る。
次ページでは、楽天の綱渡りの資金繰りの実態とともに、依然としてくすぶり続ける「楽天解体」の危機に迫る。