「アルムナイ」への向き合い方を変えた、ある企業の例

 バイアスについてお話をすると、私自身も肯定的なバイアスがかかっている可能性があります。私が経営する会社は、アルムナイに特化したクラウドシステム『Official-Alumni.com(オフィシャル・アルムナイ・ドットコム)(*1)』やコンサルティングサービスの提供を行い、企業と退職したアルムナイとの関係構築を支援しています。そのため、私を含む当社の社員は、当社以外の皆さんと比較すると、「辞めた会社に対してポジティブな印象を持つアルムナイ」や「退職者に対してポジティブな印象を持つ社員」と接する機会が多い傾向にあります。

 このような、自分自身のバイアスを取り除くためにも、常に否定的な意見には耳を傾けています。否定的な意見を持つことにはそれぞれの理由があるでしょうし、それを否定するつもりは全くありません。そのうえで、「同じ会社の出身とはいえ、私とは異なる経験を経て、異なる感情を持ち、異なるニーズのある人がいる」と考えると良いのではないかと思っています。

 企業側には、「再雇用だけできれば、それ以外の繋がりなど求めない」という考えもありますが、「(再雇用できなくても)アルムナイにファンでいてほしい」という企業もありますし、前者から後者に変わる企業も多くあります。

 ある企業は、当初は再雇用目的以外のアルムナイとの繋がりに対して否定的でした。その後、アルムナイをヒアリングするなかで、「この部署に繋いでほしい」「オフィシャルに繋がることで幅広い協業の可能性を感じる」と協業を模索する声や、「退職で切れていた縁がもう一度繋がるのは嬉しい」「自分のアイデンティティの一部を取り戻した気がして嬉しい」といった声を聞き、アルムナイに取り組む目的を「アルムナイにファンになってもらうこと」に変えていきました。

*1 Official-Alumni.comは、ハッカズークが提供するアルムナイ専用クラウドシステム。企業が効率よく運用できる管理機能に加えて、登録するアルムナイのメリットとなるアルムナイ同士のチャットや名簿検索、さまざまな募集ができる機能などが簡単に利用できるツールになっている。