大手電力会社でつくる電気事業連合会(電事連)の次期会長の人選が大詰めを迎えている。現会長の九州電力社長は昨春、「1年限り」(業界関係者)で異例の4年目突入案をのんだとみられ、交代は必至。有力候補は関西電力社長、中部電力社長に絞られているがどちらも一長一短で決め手に欠く。優勢なのはどちらか。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、ダイヤモンド編集部が両候補者をデューデリジェンスした。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
現会長は「私はもう4年間も」
交代の意思を隠さず
「私はもう4年間もこの仕事をさせていただいて、電力業界に十分貢献したのではないかなと思います」
2023年12月の電気事業連合会(電事連)の会長定例会見。次期会長人事について問われた九州電力、池辺和弘社長はそう述べ、交代の意思を隠さなかった。
池辺氏は24年春で、電事連会長に就いて丸4年となる。2000年代以降では、11~16年に会長職を務めた関西電力の八木誠社長(当時)以来の「長期政権」となっている。
振り返れば池辺氏の会長就任も異例ではあった。これまでの電事連会長は「中3社」と呼ばれる大手電力会社トップ3、すなわち東京電力(現在の東京電力ホールディングス〈HD〉)、関電、中部電力の社長による持ち回りだった。自社の経営だけでなく業界全体を取りまとめる力が求められるためだ。なお11年の東日本大震災以降、東電HD社長は輪番から外れた。
池辺氏が会長に就任した前年(19年)は、原子力発電所の立地関係者から関電経営陣が小判を受け取っていたいわゆる「小判事件」で、その年に会長へ就任したばかりの同社の岩根茂樹社長(当時)が数カ月で辞任。岩根氏の前任会長だった中部電、勝野哲社長(当時)が緊急再登板したが、あくまでも緊急対応。これまでの輪番でいえば、次期会長は本命不在となり、経営規模で中3社に次ぐ第2グループに位置する九電の社長、池辺氏に白羽の矢が立った。
2000年代以降の会長任期は、2~3年が通例。池辺氏においても昨春に交代観測があった。
だが関電、中部電が共に巨額カルテル事件など不祥事の渦中にあり、「中3社の持ち回り(東電HD除く)」には戻せない状況だった。経営規模で九電と近い東北電力の樋口康二郎社長は、極めて厳しい自社の経営環境(23年3月期の最終赤字1275億円)を理由に会長就任の打診に難色を示したとされる。外堀が埋まり、池辺氏の続投が決まった。
さて、今春は冒頭のように池辺氏が交代意欲を隠さない状況であり、「会長を4年間支えてきた東京の九電社員たちの疲労も限界に近い」と業界内でうわさされている。
電事連会長人事は大手電力の各社長同士の話し合いで決まる。現状では関電の森望社長か、中部電の林欣吾社長の事実上の二択となっている。しかし、実はどちらも「一長一短」なのだ。どちらが有力なのか、また両者の短所などについて次ページで解説する。