“推計”ではなく実数が把握できる
「駅カルテ」の最大の特長は、Suicaの利用者のデータを基にレポートを作成するので実数として“人の流れ”が把握できる点だ。
他の人流解析サービスは推計値を使用することでの誤差などが考えられるが、Suicaであれば利用者の属性が正確に把握できる。
「Suicaは、年代などの属性をはじめ、改札口でタッチしたデータが利用履歴として登録されるので、欠損データはほとんどなく、極めて正確な実数データが取得できます」と大橋氏は説明する。
しかも、利用履歴はすぐに集計されるので、毎月レポートが作成できる。公的機関が発表する統計は、1年ごと、数年ごとなど、時間の幅が大きくなりがちだが、「駅カルテ」なら1カ月ごとの細かな変化も追い掛けることが可能だ。
「駅の近くに大きな工場や学校ができたときに、その前後で人の流れがどれだけ変わったのかということを実数で比較することもできます。『駅カルテ』では、17年からのレポートを用意しており、過去から長期にわたる人流の変化を見ることも可能です」(大橋氏)
また「駅カルテ」のレポートには、駅ごとの「タイプ適合度」の分析結果も掲載されている(下図)。個別の駅ごとにさまざまなデータが把握できるので、不動産開発だけでなく、小売業、飲食業の出店計画や広告出稿の絞り込みなどにも利用できる。
首都圏の発展と企業の成長に貢献する
実際に、「駅カルテ」はどのように使われているのか。大橋氏は、「さまざまな業種にご利用いただいていますが、中でも自治体や不動産会社の活用例が目立ちます」と説明する。
自治体の場合、駅前の再開発の他、地域活性化、観光プロモーションの戦略作りなどで活用するケースが多いという。
「例えば、『休日はどの方面から来る人が多いのか』というデータを基に、その人々が電車に乗る駅周辺に的を絞り、街頭で観光パンフレットを配るといったプロモーションを実施している自治体もあります。かつては、勘と経験に頼っていたものを『駅カルテ』のデータを利用することで、より効果の高い場所を選べるので、配布コストも抑えられるようになったとご評価いただいています」(大橋氏)
不動産会社の場合は、用地取得や住宅・マンションの建設に当たり、「朝晩の通勤・通学客がどれだけ多い駅か?」ということが目安の一つとなる。
その点、「駅カルテ」なら、JR東日本の首都圏全駅の乗降者利用状況が時間帯ごとに把握できるし、過去にさかのぼって動態の変化が見られるので、新たな開発候補地の“掘り出し”にも役立つ。しかも、属性も分かるためファミリー向けか、単身者向けか、 学生向けか、 といった詳細な計画作りにも役立つ。
大橋氏は「小売業や飲食業でも、性別や年代に応じた新規出店計画や、営業時間の適正化などに役立ちます。JR東日本は今後もSuicaデータの提供を通じて、首都圏などの都市部地域の発展と、お客さまである企業の皆さまの成長に貢献してまいりますので、ぜひご期待ください」と語った。
東日本旅客鉄道株式会社
設立/1987年
主な事業内容/運輸事業、流通・サービス事業、
不動産・ホテル事業、IT・Suica事業
〒151-8578 東京都渋谷区代々木2-2-2
「駅カルテ」
https://www.jreast.co.jp/suica/corporate/suicadata/eki-karte.html