見直しの一環として、デザインと機能性の両立が求められている
就職希望者の多様化に対応する採用サイトが理想
――そのほかに、企業側から何か相談されることはありますか?
本田 多いのは、就職・求人ポータルサイトと企業ホームページ内の採用サイトで、現状は載っている情報があまり変わらない感じになってしまっている、というお悩みです。両者の役割を明確に定義せずに中身を埋めているだけだと、そのようになりがちかもしれません。就職・求人ポータルサイトは、もともと、その企業に興味を持っていた人だけでなく、不特定多数の人が訪れる場なので、たくさんの企業の中から自分たちの会社に興味を持ってもらえる情報を、ギュッと詰め込む必要があります。
これに対し、採用サイトを見に来るのは、就職・求人ポータルサイトでエントリーをして、次は初回の面接に進む人、あるいは役員面接を控えている人などで、ポータルサイトを見ている人よりも興味の度合いが強くなっているはずです。当然、ポータルサイトには載っていない情報を求めているわけで、同じ情報を載せているだけでは不十分。そのあたりの問題を解決したいということで、よくご相談をいただきます。
――最近の企業の採用サイトは、いろいろと凝った作りになっていますよね。
本田 派手な演出などの趣向が凝らされていて、楽しいサイトが多くなっています。一方で、エンゲージメントを深めるという目的で考えると、はたしてそれが最善策なのかどうか、という視点は必要でしょう。採用サイトを見に来るような人は、入社するかしないかの決め手を探しにきているわけで、何度もサイトを来訪する可能性も高い。そんなとき、凝った演出を何度も見せられても次第に感動は薄れていくでしょう。それよりは、欲しい情報をストレスなく取り出せる作りになっているほうが重要なのではないか、とも考えられます。
しかし、機能性を追求しすぎて味気ないサイトになってしまうのも違う。機能性と演出も含めたデザイン性のバランスをとることが大切で、そこが私たちにとっては大きな課題です。
――就職志望者も多様化していますし、採用サイトはその点を考慮しながら「作り」を工夫していく必要がありそうです。
本田 そうですね。以前は新卒採用サイトとキャリア採用サイトを別個に作成している企業がほとんどだったのですが、最近では両者を一つにまとめた採用サイトもかなり増えました。これから社会に出ようという学生さんが欲している情報と、すでに社会人として働いている方が求める情報は異なるので、まずそのあたりから意識していかなければなりません。
また、多くの企業ではダイバーシティ&インクルージョンの考え方に基づき、多様な人材の採用に力を注いでいます。ですから、採用サイトは外国人の方、もしくはさまざまなハンディキャップのある方などの閲覧を想定する必要があります。情報を欲するすべての人に対応できる作りになっていることが望ましいでしょう。