「マイナス金利解除後の日本株」を見通す3つのポイント、株価の上昇トレンドが続く条件は?Photo:Hiroshi Watanabe/gettyimages

「マイナス金利解除後」の世界で、日本株はどのように動くと見ればよいのか。米国で金融政策正常化が行われた際の株価への動きを振り返るとともに、今後のシナリオを展望。日本株の行方を読み解く上で押さえておきたい「三つのポイント」について、市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏が大展望した。

今回の「金融政策正常化」は
日本株にどんな影響を及ぼすか

 日銀は3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決め、2016年2月から始まったマイナス金利政策を終了した。会合の主なポイントは、

(1)金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%を適用してきたが、これを0.1%とする。

(2)また、銀行間の期間1日の資金の貸し借りレートである無担保コールレート(オーバーナイト物)は、これまでマイナス0.1~0%程度で推移していたが、今後はこれを0~0.1%程度に誘導する。

(3)当面、緩和的な金融環境を継続する。

(4)物価については、賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったと判断する。

 最初に、マイナス金利政策の背景をおさらいする。導入の目的は経済活性化やデフレ脱却を目指すことにあった。日銀は、日本経済の停滞はデフレに要因があると考えていた。金利をマイナスにして、銀行が日銀に資金を預けたままにすると金利を支払わねばならなくすることで、銀行が企業への貸し出しや投資に資金を回すように促そうとしたのである。

 一方で、今回のマイナス金利解除の背景には、コロナ禍での供給網混乱、ウクライナ戦争を受けたエネルギー・食品価格高や円安が物価を押し上げ、それに呼応して賃金の上昇を伴う形での持続的・安定的な物価目標達成(デフレ脱却)が見えてきたことがある。だからこそ、マイナス金利という異常な状態を解消すべきだと考えたのだろう。

 何しろ、マイナス金利政策下では、銀行が日銀にお金を預けると元本が減り、逆に日銀は利益が出るという不可思議な状態。ずっと続けるのは無理があったと言える。極論すれば、銀行は日銀から現金を引き出し、タンス預金をする(札束を自行の金庫にしまっておく)方がましなのだ。

 そうした意味で、今回の利上げ(マイナス金利解除)は、景気・物価の抑制を目的とする一般的な金融引き締めではない。よって、緩和的な金融環境は長く維持されると言えるだろう。なぜなら、日銀は今後も賃金上昇を伴う物価上昇を安定的に達成するため、緩和的な金融環境が必要だと考えているからだ。

 つまり、今回の利上げはいわゆる金融引き締めではなく、金融政策の「正常化」とも換言できる。この種の正常化は、米国で先んじて行われていた。

 以降、米国で金融政策正常化が行われた際の株価の動きを振り返るとともに、今後の日本株の行方を展望。その際、押さえておきたい「三つのポイント」について詳述していく。