マイナス金利解除後の日本銀行の次なる利上げは9月、早ければ7月だろう。人口動態と働き方改革による労働供給の限界が需給ギャップをタイト化させている。共に、2025年以降の賃上げ圧力となり、インフレを上向かせる。25年末には政策金利は0.75%に達するとみている。(BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミスト 河野龍太郎)
マイナス金利だけでなくオーバーシュート型
コミットメントもYCCも解除
当初から筆者が予想してきた通り、今春闘での2年連続の高い賃上げ率を確認した後、日本銀行は、3月金融政策決定会合でマイナス金利解除を含め、大規模金融緩和の終了を決定した。
筆者は、日銀が2度目のYCC(イールドカーブコントロール、長短金利操作)の上限引き上げを行った直後の昨年7月末から、2024年4月にマイナス金利が解除されると考え、その後、今年1月からは、3月決定会合でのマイナス金利解除をメインシナリオとしていた。
具体的な政策パッケージの内容も、おおむね筆者の予想通りだった。政策金利は無担保コールレート翌日物に戻し、その誘導水準は0~0.1%とされた。マイナス金利政策の下では三層構造とされていた超過準備への付利は一本化され0.1%とした。適用は翌営業日の3月21日からとなった。
年度末を控え金融機関への配慮から、新たな付利の適用は、翌積み期の4月中旬からと筆者は考えていたのだが、直前に市場が政策変更を十分に織り込み、必要なヘッジが完了したと日銀は判断したのだろう。
バランスシートの拡大を約束したオーバーシュート型コミットメントと共に、YCCも完全に解除された。今後の長期国債の買い入れについては、これまでと同程度の買い入れを行うとした上で、長期金利が急騰する場合については、機動的に対応し、指値オペなどで対応するとしている。
筆者自身は、長期金利急騰を回避するため、長期金利の誘導目標の0%程度は撤廃するものの、万が一の保険として何らかの緩いキャップを残し、場合によってはYCCの部分解除にとどめると当初は考えていた。
しかし、今春闘で5%を超える高い賃上げが達成され、2%のインフレ目標の実現が見通せる状況になったとする中で、具体的な数値のキャップを長期金利に残すのは、不自然と日銀は判断したのだろう。
次ページ以降、次なる利上げの時期を予測し、その背景にある要因を検証していく。