日本銀行の17年ぶり利上げ決定による恩恵を受け、今後の株価上昇の期待を集めるのが銀行業界だ。金利が復活し、利ざや拡大が見込めるマイナス金利解除は、銀行業界にとって朗報のはず。だがメガバンクや地銀、ネット銀行の状況をつぶさに見ていくと、そうとも言い切れない。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男、ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
マイナス金利解除で収益拡大期待
3メガ首脳は日銀の政策変更を歓迎
「ゲームチェンジ」。みずほフィナンシャルグループ(FG)の木原正裕社長は、日本銀行が決めたマイナス金利政策の解除について、そう語って歓迎した。
これまでの「金利のない世界」で銀行が戦ってきた“ゲーム”は、為替業務や投資信託などの金融商品の販売、M&A(企業の合併・買収)アドバイザリー業務などで、ひたすら手数料を稼ぐもので、それが唯一の勝ち筋だった。
だがそれも、マイナス金利解除でゲームセット。金利が復活すれば、企業への貸し出しなどの運用と、預金などの調達の金利差である利ざやの改善が見込め、金利収益の拡大が期待できる。銀行の本業である金利差で稼ぐという、本来のゲームに変わるというわけだ。
金利上昇により本業が復活すれば、銀行の収益力は格段に増す。日銀の政策転換前から、こうした期待が銀行株の堅調を支えていた。
実際、2022年3月からの米国での金利上昇、さらに23年7月のYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)柔軟化をきっかけとした国内金利の上昇により、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と三井住友フィナンシャルグループ(FG)、みずほFGの3メガバンクの業績は劇的に改善。中でも三菱UFJFGは、23年度第3四半期の時点で純利益が1兆2979億円に到達し、通期目標の1兆3000億円をわずか9カ月間でほぼ達成してしまうほどの爆発力を見せた。
マイナス金利解除に対する反応を取材していくと、銀行業界の中でも悲喜交々が見えてきた。次ページでは、今回の日銀の政策変更で想定以上の業績上振れが期待できそうな“うれしい誤算”があったメガバンクと、金利復活でジリ貧に陥りそうな地銀の明暗に迫る。