「いったい、この店には、どのくらいの品物がそろってるんですか?」

「さあ、数えたことないけど……ざっと650種くらいはあるんじゃないかな。田舎のバールだから、地元の人が日常的に必要なものは、何でもそろえておくに限るよね」

 私はどうも自己中心的に考え過ぎたようで、この手のバールは、あくまでも地元の人に焦点を絞っているのだ。地元のおばあさんが、スーパーで買いそびれたアンチョビだったり、昼食のお惣菜だったり、食事に招かれた時の手土産のチョコレートの箱だったり……。基本的に村のよろず屋なのである。

 主人は、独り言のように続ける。

「この店は60年代に僕の親父が始めたのだけど、この辺は、20年くらい前まで何にもなかった。畑ばかりさ。そのうち、住宅地が街からどんどん押し寄せてきて、それに合わせて扱う商品の品数も増えたのさ」

どうしてイタリアには
コンビニが無いのか?

 これだけそろえば、ちょっとしたコンビニエンスストア並み、と思いかけて、あることを思い出した。数年前、イタリアのホテル学校で教鞭をとる方が、「この国では法律で24時間営業ができないからコンビニエンスストアがないんですよ」と教えてくれた。言われてみれば、24時間営業の店を見かけない。

 調べてみると、法律では、バールは日に5~6時間の休みをとらなければならず、休憩なしに営業できるのは13時間まで。自治体によって違うが、ボローニャやローマの場合、夜は午前1時か、遅くとも2時には閉店しなければならない。

 グローバル経済に乗り遅れまいとするシルビオ・ベルルスコーニ政権の頃にかなり規制緩和され、現在では22時間くらいまでの営業なら可能だという。そろそろ外資系のコンビニエンスストアでも進出してきそうなものだ。

 質問の相手を間違っているかもしれないと懸念しながらも、たずねてみた。