ワーキングホリデーでオーストラリアに来る日本人の若者も減っていることもそれを裏付けている。最近はオーストラリアの時給が日本の2倍以上もあることが知られて、オーストラリアで働こうという若者は増えているようだが、それでもせいぜい毎年1万人前後で推移している。

 人口が日本の3分の1程度の韓国から、4倍以上の3万4870人が留学に来ているのを見ると、いかに日本の若者が内向きで、海外を敬遠しているかが分かるだろう。

 日本人留学生の落ち込みが始まったのは、スマートフォンが普及してから間もない頃で、当初は日本の大学関係者から、日本人学生が海外留学を敬遠する理由として、「日本のテレビ番組が見られないから」「海外だと携帯がつながらないから」などといった、まるで冗談のような話を聞いていた。だが最近はSNSやネット配信が発達してその問題もなくなったというのに、日本人留学生の減少は回復傾向にあるわけではない。

 日本人学生は世界に対する興味を失っているのだ。

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オーストラリアの教育改革

 日本の教育に言及する際、その対極にあるオーストラリアの教育制度は非常に参考になると思われるのでここで紹介しておこう。

 オーストラリアの教育は、各州ごとに制度が異なる面が多い。

 例えば最大のニューサウスウェールズ州では、日本の大学入試センター試験に相当する、「HSC」と呼ばれる、大学入学のための統一試験がある。

 ただし日本のような一発勝負の試験ではなく、12年生(高校3年生に相当)の1年間で出される宿題や実習なども加味し、多面的に評価される仕組みになっている。HSCの試験科目は、自分が行きたい大学のコースが要求する10単位以上の試験科目を選択する。

 日本の大学入試と比べて最も特徴的な点は、試験選択科目の多さだろう。化学や世界史といった通常の科目はもちろん、演劇や音楽、美術や保健体育をはじめ、ホスピタリティー学、宗教学、社会福祉学など、実に100科目以上にわたる多彩な科目から試験科目を選べる仕組みになっている。これにより、幅広い生徒の個性や生い立ちを、学業選択で生かせる仕組みになっているのだ。