前回のコラムでは、「公的年金の繰り下げ受給」をすると、医療費の自己負担が増える恐れがあるという“落とし穴”について解説した。今回は、「介護費の自己負担割合」が増える可能性を検証しよう。介護は一旦必要になれば、その負担が続く期間は長くなりがちだ。年金の繰り下げ受給を検討するなら、介護費の自己負担割合には要注意である。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
年金額がいくらになると
介護サービス費の負担は増えるのか?
前回は『年金繰り下げで「医療費の自己負担」増加の罠にご注意!“高額療養費”で大差も…』というタイトルで、大人気の「公的年金の繰り下げ受給」における隠れたデメリットについて取り上げた。
本来65歳から受け取る公的年金の受給開始時期を遅らせることを「年金の繰り下げ」という。受給を遅らせると、額面の年金額は1カ月ごとに0.7%増える仕組みだ。
受給開始を5年繰り下げて70歳にすると、65歳時点での年金額の1.42倍、10年繰り下げて75歳にすると1.84倍にもなる。受給開始を遅らせるだけで年金額が増えるのだから、想像するだけでわくわくする人が多いようだ。
繰り下げのメリットは、年金額の増加と、長生きするほどトクをすることの2点。
ところが、注意点やデメリットはみなさんが想像するより多い。中でも、「年金額が大きく増加すると、医療費・介護費の自己負担が増える」という点は見逃すことができないデメリットだ。
繰り下げをした結果、どのくらいの年金額になると自己負担が増えるのか、読者のみなさんは目安となる年金額を知りたいはず。前回は、医療費について年金額ボーダーを試算した。今回は介護費について解説しよう。
調べてみると、介護費の負担割合は医療費と同様に1~3割だが、負担割合が増える所得基準は介護保険のほうが厳しめ(負担割合が増える所得基準が低い)であることが分かった。
また、一般的に介護サービスを受ける期間は、高額な医療費がかかる期間よりも長くなる。介護が必要になると、多くの場合、時間の経過とともに要介護度は上がっていく。病気のように「治る」というケースはまれだろう。
つまり、負担割合については、医療費よりも介護費のボーダーを重視して繰り下げを検討すべきなのだ。
さっそく、負担割合の試算結果を見ていこう。