悩む医師写真はイメージです Photo:PIXTA

難治性の疾患を抱えた患者の家族にとって、現在のはかどらない治療にもどかしさを感じる場面は多々ある。そんなときは、別の医師に意見を求めたくなるものだが、「セカンドオピニオン」にあたっては、気をつけるべき点がいくつかあるようだ。※本稿は、松永正訓『開業医の正体 患者、看護師、お金のすべて』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです。

意見を求められるのは
ほぼ助からないケースばかり

 セカンドオピニオンを求められて、1回だけ意見を述べて終了した患者家族もいたが、一方で、治療の全経過を母親がリアルタイムでうちのクリニックにファックスしてくることもあった。その患者のデータはかなり膨大でファイルケースに収めて、院長室の書棚に今でも保管している。そういう患者家族は強烈に今でも覚えているし、忘れようがない。

 そもそもセカンドオピニオンを求めて千葉まで来るのだから、治療がうまくいっていない症例がほとんどだった。小児固形がんは再発するとほとんど助からないし、標準的治療を行っても腫瘍が消えない場合、逆転の一手というのはまずない。がんの治療の目標は、「救命」と「延命」と「生活の質の向上」の三つである。だからぼくの意見は後者の二つにフォーカスが当たっていた。

 すると、半年とか、1年とかすると訃報が届いたりする。開業医になって子どもの死の報せを聞くのは本当につらい。ぼくは大学病院時代におよそ100人の子どもの死に接してきたが、開業医になってから接する死の方が精神的にはきつかった。

 結局ぼくにとってセカンドオピニオンは、人助けであり、また自分が頼られるという自己肯定のプロセスだったように思う。1回に3万円もお金を取らなくて本当によかった。そんなことをしていたら、自分は商売人になってしまっていただろう。