現代の経営に携わる意思決定者は、経営戦略やオペレーション、人事、サプライチェーン、会計などの伝統的な経営分野での考察にとどまらず、哲学、心理学、脳科学、医学、倫理学、経済学、テクノロジーといった多岐にわたる分野からの多面的な洞察が要求される。
なぜなら、変化に対して適切な意思決定を継続的に行うためには、異なる専門分野の知識を統合し、複雑な情報から内外の環境を分析・評価しつつ深い洞察を導く必要があるからだ。
我々は、その概念を「統合知」という。
書籍『経営に新たな視点をもたらす「統合知」の時代』は、PwCコンサルティング合同会社のシンクタンク部門であるPwC Intelligenceがまとめる最初の書籍である。
本連載の第3回は、その第4章「人間社会に溶け込むテクノロジーとの付き合い方」より抜粋し、お伝えする。
テーマを深掘りすると、ますます高齢者比率が高くなる日本でも、日本の強みを生かしたテクノロジーと積極的に共存する社会の姿が見えてくる。

「日本ならでは」のテクノロジーと共存する姿〈PR〉

人間とテクノロジーが共存する時代へ

 加速度を増して発達するテクノロジー。人間の社会がいかに向き合い、共存していくかは極めて重要な今日的テーマである。

 これまでは、従来のやり方で直面した課題や制約を乗り越える必要性が高まった時に新たなテクノロジーが生まれ、人間はこれを活用してきた。人間が主で、テクノロジーが追従する関係性の時代であった。

 しかし、テクノロジーが発達した現代では、人間とテクノロジーの関係はより水平なものになってきている。最も代表的な例はロボットや人工知能(AI)であり、これらとの共存が進む社会が到来しつつある。

 ロボットは人間の能力を補い、同時にロボットが自律的に判断しながら生産活動を行ったり、人間の日常生活を便利にしたりするなど、より高度なものとなってきている。

 AIはこれまで、人間の社会やルールを理解することが苦手だとされてきた。例えば、道路標識などのように人間が瞬時に認知できる当たり前の情報を、人間同様に解釈する能力を獲得するのは難しいとされてきた。

 しかし、AI自身が膨大なデータを自動的に反復的に学習することで、人とのギャップは埋まってきている。

 将来的には、オンラインなどで姿が見えない状態で会話していた相手は実はAIであったというようなことが日常茶飯事になるなど、AIはいま以上に自然な存在として人間の生活に入り込んでくるだろう。

 人間側はこうしたテクノロジーとの関係、さらにテクノロジー同士の相互作用にも目配りしながら、その社会の歴史や文化、価値観といったコンテキストに適合したルールを形成しつつ、持続可能かつ豊かで創造性あふれる社会をつくることが求められる。