メタボの男性写真はイメージです Photo:PIXTA

酒はグイグイ飲むし、コメもラーメンもガンガン食べる、それでいながら「糖尿病、心配っすよね」と互いを気遣いあう男たちは夜の街に大勢いる。言うまでもなく、要注意だ。ハイリスク予備軍であるメタボ男性の健康診断データをもとに、糖尿病の進行を学んでいこう。※本稿は、野口 緑『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。

1年で5.5kg増、血糖値は急上昇!
メタボ健診でひっかかった54歳男性

 54歳男性のCさんはもともと太り気味。1年前は体重84kg、腹囲93cmで、すでにメタボの基準を超えていました。

 それが今年の特定健診(メタボ健診)では、体重89.5kg、腹囲98cmとさらに増加。それとともにHbA1cが6.6%、空腹時血糖値が122mg/dLと、糖尿病のギリギリ手前になっていました。

 尿酸値も基準値の上限ギリギリの6.9mg/dLに上がっていました。メタボになって内臓脂肪が増えると尿酸の産生が進み、同時に尿酸の排泄低下が起こるため、一般に尿酸値は上がります。

 脂肪肝も進んでいて、肝機能の数値を表すALTやASTも上がっていました。ALTやASTは肝細胞の中にある酵素で、これらの数値が高いということは、それだけ多くの幹細胞が壊れていて、肝臓がダメージを負っていることを意味します。

図表:Cさんの健康診断の結果同書より 拡大画像表示

 Cさんは1年で体重が5.5kg増えて、腹囲が5cm増加。それとともにHbA1cや空腹時血糖値が上昇しました。つまり内臓脂肪が増えたことで糖代謝が悪くなったわけです。

インスリンが血中の糖を
中性脂肪に置き換えていく

 膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンは「血糖値を下げるホルモン」というイメージがあるかもしれませんが、このインスリンは脳に必要なブドウ糖を維持するため、「血糖をコントロールするためのホルモン」です。

 食事をしていない就寝中などは、血糖が下がりインスリン量も減りますが、血中インスリン濃度が低下すると、肝臓にたくわえておいたブドウ糖の塊(グリコーゲン)を分解するよう刺激が入り、必要な糖が補給されます。そうして血糖値を一定に保つのにもインスリンは深く関わっています。

 そのため、食事をとっていない時間帯も含めて、インスリンは1日中一定量が分泌されています。これを「基礎分泌」といいます。一方、食事で血糖値が上がったときは大量のインスリンが分泌されて、余分な糖を肝臓や脂肪細胞などに取り込むように働き、血糖値を下げます。このときのインスリン分泌は「追加分泌」と呼ばれています。

 大量に分泌されたインスリンは、血液中の糖を中性脂肪に置き換えて脂肪細胞に取り込みます。Cさんが5kgも太ったということは、インスリンが十分に分泌されていたということ。ところが、メタボになって内臓脂肪が増えると、脂肪細胞から分泌されるTNF-αなどの悪玉の生理活性物質によって、インスリン作用が落ちる状態が生じます。