価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

企業のパーパスやビジョンを考える際に、なぜ偉人の名言が役につのか?Photo: Adobe Stock

なにか違うなと思ったら、ブレスト相手を変えてみる

 前回ご紹介した「偉人ブレスト」で、もうひとつ大事なことは、思考を止めないことです。

 かなり慮って聞いても、的外れなお言葉ばかりのことも。そういうときは、ひとつの名言に時間をかけずに、どんどん次の名言に移っていきましょう。100個くらいの名言に当たって、1つから大きな示唆をもらえたらよい、くらいの気持ちで臨みましょう。

 さらに、その偉人の名言がどれもお題からはピントがずれているようなら、ブレスト相手を躊躇なく替えましょう。偉人の先生は、もうお亡くなりになっている方が多いのですし、ブレスト相手の交代に対して忖度しなくていいのです。

 ピカソ、ウィンストン・チャーチル、マザー・テレサ、ニーチェ、アリストテレス、芥川龍之介、ナポレオン、坂本龍馬、リンカーンなどなど、偉人たちがいつでもブレストの相手になってくれます。

 ちなみに、なかなかいい相性のブレスト相手が見つからなくて、かつ、急を要するようでしたら「○○名言」を、考えなければいけない領域にして検索してみましょう。

ビジネス 名言」ですと、経営者やビジネスパーソンの偉人たちが寄ってたかってブレスト相手になってくれます。

 今回、私が考えていた温泉市街地のように「まちづくり」についてはどうでしょうか。「まちづくり 名言」で検索してみると、名言がまとめられたサイトは出てきませんが、考えに資するような名言はいくつか出てきます。

「街づくりは人づくり、人づくりは我づくり」立教志塾

「点が線になり、面になる」スティーブ・ジョブズ

「金を残して死ぬのは下だ。事業を残して死ぬのは中だ。人を残して死ぬのが上だ」後藤新平

「暗ければ民はついて来ず」坂本龍馬

「経済なき道徳は戯言、道徳なき経済は犯罪」二宮尊徳

 どうでしょう、先ほどの温泉市街地の再活性化に対して、ちょっとアイデアが膨らんできそうではありませんか。

 この偉人ブレストは、受け取る自分自身の技量によるところが大きいですが、あらゆる問題で使うことができるものです。

 でも、いちばん効果を発揮するのは、未来を構想するときです。パーパスやビジョンといった経営の未来像を描くときや、事業コンセプトといった事業の未来を構想するときには、ぜひ使ってみてください。

 私たちは、仕事のことを考えるとき、近視眼的な考えになってしまいがちです。偉人の先生たちは、そんな私たちに活を入れてくれます。

 以上が、偉人ブレストの紹介でした。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤 安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。