コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)

【投資のギモンQ&A】新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は、どう使えばいいのですか?Photo: Adobe Stock

――新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は、どう使えばいいのですか?

【投資のギモンQ&A】新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は、どう使えばいいのですか?中野晴啓氏:なかのアセットマネジメント 代表取締役社長

中野 あまり深く考える必要はありません。確信をもって、このファンドと添い遂げるんだという気持ちがあるならば、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の別に関係なく、両方の口座を使ってずっと積立を続けていけばいいと思います。

 現状、成長投資枠でしか買えない投資信託は、1200万円までしか買うことができません。対して、つみたて投資枠に含まれている投資信託であれば、新NISAの生涯投資枠である1800万円まで積み立てることができます。その点を考えれば、つみたて投資枠の対象ファンドの中から、自分の信頼できる1本を見つけ、それだけをコツコツと積み立てて行けばいいという考え方もありますが、新NISAでは普通の人には、十分な生涯非課税保有限度額があるので、つみたて投資枠には登録されていない魅力的なアクティブファンドを見つけて、成長投資枠を有効活用していく方も増えていくことでしょう。

 また、投資額の一部を個別株式に充当して、長期に応援投資していくことも悪くありません。

たくさんの投資信託にお金を分散すれば、
それで十分な分散投資になるのか?

 一方で非課税枠が大きく拡大したからと言って、これは投資信託による資産形成をしようとしている人にありがちなのですが、いたずらに、たくさんの投資信託にお金を分散すれば、それで分散投資効果が高まると思っている方も少なくありません。

 たとえば、S&P500とNASDAQ100、全世界株式(オール・カントリー)のそれぞれに連動する3本のインデックスファンドを買ったとしましょう。投資金額はそれぞれ50万円ずつです。果たして、このポートフォリオを持っているからといって、効率良く資産分散が図れていると思いますか?

 S&P500とNASDAQ100は、いずれも米国株式によって構成される株価指数です。また、オール・カントリーも全世界の株式市場に分散投資したのと同じ投資成果を目指すとされていますが、全体の60%は米国株式で構成されています。

 となると、米国株式に投資している金額は、次のようになります。

 S&P500……50万円
 NASDAQ100……50万円
 オール・カントリー……30万円

 150万円の総投資金額のうち130万円が米国株式ですから、実に86.67%が米国株式への投資比率になります。

 もちろん、それぞれの指数のなかで銘柄分散はされているものの、100ある資産のうち86.67%が米国株式になる上に、とりわけ大型株の銘柄重視も顕著となり、正直、かえって分散の有効性を損ないます。

しっかり分散投資効果を効かせた1本で運用する

 要するに、いたずらに保有ファンドの本数を増やすよりも、しっかり分散投資効果を効かせて運用している投資信託をていねいに選んでいくことのほうが大事だということです

 したがって、つみたて投資枠と成長投資枠を使い分けて、別々のファンドを保有することは良いとして、非課税枠が大きくなったからといって、やみくもに多くのファンドを持つことでは、必ずしも有効な分散にはつながらないことを知ってください。

【答え】
 新NISAでは2つのNISA枠が併用できるので、つみたて投資枠と成長投資枠から各々信頼の置ける魅力的な投信を探し出して、併せ持つことも考えてみてはいかがでしょうか。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/